恋は、秘密主義につき。
就業前に、たぁ君からふーちゃんの登社時間について申し送りはなく、午前中の業務を終えて一実ちゃんとランチルームでお昼休憩。

「双葉クン、まだ来ないわねー」

「もしかしたら、本社に寄ってからかもしれませんね~」

今日は私の好きな、おいなりさん。甘塩っぱさがじゅわっと染みたお揚げと酢飯の絶妙な味加減にほっこりしながら、のんびり答えます。
来ると決まっている以上、あたふたしても、もうどうにもなりませんから。

「ストーカー課長、朝から顔色悪かったけど大丈夫?」

丸テーブルの向かいで一実ちゃんが、クスクスと。

「ああ見えてたぁ君、デリケートなので」

胃薬の差し入れしましょうか。頭の隅でそんなことを思っていると。

「レイちゃん」

聞き慣れた声がして振り仰ぐ。

「良かった、見つけられて。いい、一緒に?」

ランチボックスとお茶のペットボトルを乗せたトレイを両手に、爽やかな笑顔の征士君が脇に立っていました。
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