恋は、秘密主義につき。
突然すぎて、息を呑んだまま固まってしまった私。
ふーちゃんに言わせちゃ駄目。絶対に止めなくちゃ、ダメ・・・!

思考回路は回っているのに運動機能が麻痺してしまったみたいに。喉元に引っかかって言葉が出てこない。

「・・・・・・ぁ・・・」

掠れた声が、ようやく詰まっていた息と一緒に漏れ出て。懸命に口を開こうとした。

「・・・君は?」

落ち着いた声がふーちゃん越しに聴こえてくる。

「佐々木双葉。佐々木は親父の名字だけどね、正真正銘ミレイの従兄弟だよ。愁兄より血も濃いし、愁兄よりぼくの方がずっとミレイを愛してる。アンタなんかお呼びじゃない、さっさと消えなよ」

「ふーちゃん・・・!!」

思わず上着の裾を掴んで、小さく叫んだ。

「だめですっ、それ以上はっっ」

何事かと、周り中から好奇の視線が刺さっていることに構う余裕もなく。ただただ必死でした。

これから二人は一緒に仕事をしなくちゃいけないのに。
こんな風に自分のことで(いさか)ったりしてほしくなかったのに・・・!

そう思った時には、涙がポロポロと零れ落ちていました。

「・・・そんなこと言うふーちゃんは、きらいです・・・」

「ミレイ・・・!」

鼻をすすり上げながら涙声になったのを、慌てた様子でふーちゃんが振り返り。私の前に跪いて、優しく指で目尻を何度も拭ってくれる。

「・・・ごめん、ミレイ。泣かせてごめん」

昔から私を一番泣かせては、誰より私の涙に弱いふーちゃん。・・・天の邪鬼にもほどがあります。
そのまま自分の肩に私の頭ごと引き寄せて、あやすように髪を撫でてくれる。

「ぼくはミレイを守りたいだけなんだよ。・・・それは分かってくれるよね」
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