恋は、秘密主義につき。
「分かってます・・・けど、征士君を悪く思わないでください・・・」

弱々しくお願いすれば、溜息交じりに「・・・思うけど、言わない」・・・と、ふーちゃんにしては百歩譲ってくれたような返事が返りました。

おずおずと顔を上げて、初めてふーちゃんと目を合わせる。
そこにはちょっとばつが悪そうな、アイドル並みの綺麗な顔が目の前にあって、可笑しくなってしまいました。

「なんで笑うのさ」

不貞腐れるふーちゃん。

「素直じゃないところは、いつまで経ってもふーちゃんですねぇ」

「なにそれ。ムカつく」

言いながら、前のめりになって私の唇にチュッとキスを落とし、何もなかったようにすっと立ち上がった。

一瞬。ここがどこなのかを忘れ去っていて。
なんだか別の意味で刺さる視線に、真っ青になりました。
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