恋は、秘密主義につき。
それは、ふーちゃんが出向してきて十日ほど過ぎた頃のことでした。

『ホテル飽きたし、ミレイん()行くから。明日、迎えに来てよ』

前触れもなく土曜日の深夜にかかってきた電話。
佐瀬さんと会った昼間に体力を使い果たしたせいか、気持ちよく熟睡していた最中(さなか)です。
半分眠っている頭はほとんど回らずに、「むかえ・・・って、だれがですか・・・?」と子供みたいに訊き返します。

『何のための運転手なの、佐瀬サンは?』

憮然とした口調で時間まで指定すると、ふーちゃんは言うだけ言って『じゃあね、おやすみ!』と一方的に切ってしまいました。

その時はまたすぐに寝落ちしてしまい。次に開いた薄目に、カーテンの隙間から漏れる白っぽい外光が届いて、もそもそと寝返りを打つ。

気怠さに包まれながら醒めつつある意識の中で、真夜中に起こされた記憶が蘇り。ぼんやりとそれを辿っていく。

・・・・・・えぇと。確かふーちゃんから電話があって。・・・なんでしたっけ。
ああ、そうです、迎えにきてほしい・・・って、佐瀬さんと。・・・・・・佐瀬さんに?

「・・・・・・・・・・・・・・・」

こと私に関しては犬よりも嗅覚が鋭いふーちゃんに、佐瀬さんへの気持ちを悟られてしまったらどうしましょう。
・・・・・・無理な気がします。ふーちゃんに敵う気が全くしないです。


羽根枕に突っ伏して、このまま夢の世界へと逃避したくなった私です・・・・・・。



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