恋は、秘密主義につき。
日曜日で普段より遅めの朝をくつろいでいたパパとママに、ふーちゃんがしばらく滞在することを伝えれば。

「あら、それじゃ今晩は鰻にでもしようかしら。そうだわ、明日からお弁当も三人分作らなくちゃ!」

ママが瞳を輝かせて、浮き浮きとパパを買い物に誘っています。

「ああ見えて、双葉君も重要な仕事を任されてるんだなぁ」

ぽつんと感慨深げなパパでしたけど。『ああ見えて』はどう見えてたんでしょう?


ふーちゃんとの約束は午後の4時。たぶんお昼過ぎまで寝ているつもりだと思います。
佐瀬さんに連絡したら、『それまで時間あンだろ。・・・来い』とにべもなく言い切られました。・・・見かけよりも独占欲が強い・・・ような気もします。比べようがないので、よく分かりませんけれど。

前よりも佐瀬さんは、違う表情を見せてくれるようになりましたし、とても空気が柔らかくなりました。
それでもまだ、どこまで踏み込んでいいのか惑ってしまう。
家族とはどうしているのか、とか。どうして極道をやめてしまったのか、・・・とか。

躰を重ねるごとに(ほど)けなくなっていく、二人を繋ぐ結び目。
・・・その強さを信じて、すべてが見えていなくても迷わないのが愛なんでしょうか。
その強さを信じるなら、なにを明かされても揺るがないと、真っ直ぐに向き合うことが愛ですか。

結婚という言葉を、貴方はどんな風に受け止めてくれたんでしょうか。
その答えを。私はいつ求めたら。

洗面化粧台の前でシャワーを浴びたあとの髪を乾かしながら。ふと。そんな感傷に囚われていました・・・・・・。
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