恋は、秘密主義につき。
いちいち着替えるのも面倒だからと、私もふーちゃんもすでに正装で車に乗っていました。

光沢のあるチャコールグレーのスリーピースに、ライトグレーのドレスシャツ。縦一列にシルバーのひし型リベットが施されたお洒落な黒ネクタイ。
ダークブラウンの髪はいつもよりサイドを後ろに長し気味にして、スッキリと見せているせいか、心なしか大人びたふーちゃん。

私はといえば。
宣言どおりふーちゃんの見立てで、ゴスロリ風なドレスに着せ替えさせられました・・・。
襟元のリボンタイ。首回りはレース。フリルの胸元に、シースルーのビショップスリーブ。ウエストリボンは背中で結ぶタイプで、ふわりと裾が広がるミディ丈の可愛らしいドレスです。

髪はそのまま下ろし、頭には羽根飾りや薔薇、レースリボンがあしらわれたヘッドドレスが。
網目模様のストッキングに、ちょっと厚底の、クロスベルトとアンクルストラップがついたパンプス。
唯一、ヘッドドレスの赤い薔薇がアクセントになっていますが、こんなに黒で統一されていて不吉じゃないでしょうか。

姿見の鏡に映った私を見ながら、ふーちゃんはとても満足そうにキスを落とし。
家まで迎えに来た佐瀬さんは私を見て一瞬、目を見張り固まっていたと思います。

それ以上に、しばらく息をするのも忘れたのは私でした。
目を離せずに釘付けになって、もしかしたら、口もだらしなく半開きになっていたかもしれません。

思い返しても、こんなに衝撃を受けた記憶がなかったくらい。
そのくらい佐瀬さんが。別人かと思ったくらいあまりに格好良すぎて。心臓が破裂しそうになった。

三つ揃い姿の貴方なんて。想像もしていなかったから。
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