恋は、秘密主義につき。
11時半まえには到着し、受け付けも済ませて12時開催の大きな会場に私達三人はいました。

ホテル『グランディエ・リゾートKUSUDA』。
まだ全国にそれほど展開していませんが、ラグジュアリーさと寛ぎ感をあわせ持つ格上のリゾートホテルとして、人気はとても高いのだとか。

結婚式の披露宴ばかりでなく、ディナーショーや公人の講演会、レセプションも行われるという『(くれない)の間』。
豪奢なシャンデリアにレッドカーペット。とても煌びやかですが、上品で上質な空間の演出がされていて、誕生日祝いというよりVIPの晩餐会に思えてしまいます。

一段高くなった舞台脇では、ジャズバンドが生演奏。
ビュッフェ形式の立食パーティで、飲み物はバーカウンター。食べたいお料理の前で、給仕さんがお皿に取り分けてくれるスタイルのようです。

真っ白なテーブルクロスがかかり、テーブルフラワーに彩りを添えられた円卓がある程度の間隔で置かれ、その周りを囲むように談笑する招待客のみなさん。装いはフォーマルだったり着物だったりと、それぞれに華やか。
年配者ばかりかと思い込んでいましたけど、たぁ君や私達と変わらない年頃の若い人の姿も見えました。


「非公式だけどさ。今度、スポンサー契約するスポーツチームの選手とか、CM起用予定のタレントも来るらしいよ?」

出入り口からあまり離れていない、後ろの方の円卓の前。
二人に挟まれる格好で、右隣にいるふーちゃんが興味もなさそうに言います。

「大変だよねぇ、ゴマすりも。誕生日プレゼントの下にお金が埋まってんじゃない?」

「思ってても言わないでください~」

焦り気味の声を潜め、エスコートされている腕にかけた手が思わず力みます。

「そういう連中しかいないってハナシだよ」

レースの手袋をはめた私の手の上に、空いている手を重ねたふーちゃんは。
心底嘲るように。冷たい横顔を覗かせていました・・・・・・。


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