恋は、秘密主義につき。
兄さまに“ヨシ”と許しをもらい、三つ揃い姿の人間に戻ったたぁ君は。人目もはばからずにスマートフォンでパパラッチのごとく私の写真を撮りまくり、ようやくご満悦です。

「美玲はまさに、お兄ちゃんの為に生まれてきた天使だな」

眼鏡のブリッジに手をやり、そんな得意顔で言われても。

「立樹。美玲だっていつまでも子供のままじゃないよ」

ロビーに場所を移し、隣り合って腰掛けた兄さまが向かいのたぁ君に柔らかく。

「お前もそろそろ兄離れしないとね」

「一生しないに決まってる!」

断言しないでください~。

「愁ちゃんだって無理だろう? こんな可愛い妹を手放すくらいなら、俺は人間をやめる」

ときどき、半分くらいやめちゃってる気もしますけど。

そっぽを向いて年甲斐もなく拗ねるたぁ君に、兄さまは困ったように眉を下げた。

「たとえ離れ離れになったとしても、美玲は永遠に僕の宝物だよ。・・・いつか僕が、また別の誰かを愛することがあっても変わることもない。美玲の人生は美玲のもので、僕らの愛情で閉じ込められはしないよ」

「それは! ・・・分かってないわけじゃない」

不承不承といった表情で、苦そうにつぶやくたぁ君。

「そうだね。立樹は、美玲が大好きな“お兄ちゃん”だからね」

その一言で。
たぁ君は白旗を上げて降参したようでした。
どことなく涙目になっているのを堪えるように、気丈に見せて言います。

「でもお兄ちゃんは、そう簡単に美玲を嫁にはやらないぞ!」

たぁ君の隣りで気怠そうに脚を組み、我関せずだった佐瀬さんと。目が合って。


往生際がいいのか悪いのか。可愛いお兄ちゃんを、いつまでも私は大好きですよ。
そんな思いを込め、小さく笑みをほころばせたのでした。



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