恋は、秘密主義につき。
なんだかもう。一気に色々なものと濁流に流されていく感覚。
私の意思とは関係なく。
底に足も付かず、岸に手を伸ばすこともできないで。

ただ。呑まれていく。


「じーサマと愁兄の思惑なんてどうでもいい。鳴宮との政略結婚が潰れて、ミレイが泣かないんならね。・・・言っとくけど、ぼくの機嫌はとっといた方がいいよ? 楠田ごと潰されたくないだろ?」

「双葉。それくらいにしないと、・・・僕も本気で怒るよ」

静かな声でした。
やんわりとふーちゃんを制し。脚を組み替えて、口許に仄かな笑みを乗せた兄さま。
けれど全身で放つ空気は、佐瀬さんの眼差しと同じくらいに鋭く冷え冷えとして。

「一人で先走らないで、少しは美玲の気持ちを考えてあげないとね。いま一番どうしていいか分からなくて、可哀そうじゃないのかな」

ふーちゃんが言葉を詰まらせたのを、畳みかけるように。

「佐瀬に美玲を返してあげなさい。泣かせたくないなら」
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