恋は、秘密主義につき。
「佐瀬。そんなに殺気立つと、美玲が怯えてしまうよ」

落ち着き払った声で、愁兄さまがやんわりと間を割った。

「・・・放っとけ。オレの女だ」

低く抑揚のないトーンで撥ねつける。威圧感すら漂わせ。佐瀬さんは言った。

『オレの女』。

頭の天辺から電撃が突き抜けて。細胞中に火花が散った。

このひと言に込められたのは・・・!

貴方と生きることの本当の意味。
愛するということの本当の覚悟。強さ。重み。

ああ。私に一緒に背負えって。
過去も、これからのすべても。

分け合うから受け止めてみせろって。




嵐の真っ只中にいるのに。
こみ上げる切なさと愛おしさで心臓が潰れそうになっていました。

必死に貴方にしがみつき、離れないと何度も心の中で誓った。
この先。何が待ち受けていても。
もしか。・・・佐瀬さんとお祖父さまに、私の知らない禍根(しんじつ)があったのだとしても。
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