恋は、秘密主義につき。
「ま・・・、ジジィに遠慮なく吠えついたのは褒めてあげるよ」

「・・・そりゃドーモ」

「犬死にしても骨くらいは拾ってやってもいいかなぁ」

鼻でせせら笑うふーちゃん。

「せいぜい油断しないことだね。じーサマにとっちゃ、他人なんか虫けら同然なんだから」

皮肉めいた響きにそれとなく、佐瀬さんへの気遣いが滲んでいた気もしました。
ふーちゃんの中で少し、“風向き”が変わってきたのかもしれません。
胸の内で内緒の笑みをほころばせた。・・・つもりでしたけど。

「なに嬉しそうなカオしてんの、ミレイ。佐瀬サンを気に入らないのは、永久に変わんないよ」

「?!」

寄せられた囁きと一緒にいきなり耳たぶを甘噛みされ、躰をビクリと震わせる。
バッチリ開いた目の前には、意地悪そうに口角を上げたアイドル級の美貌。

「寝たフリで盗み聞きとか、百万年早いから」

「お、お話中だったから、いつ起きようかって思ってただけです、よ?」

目が泳いでしまっている時点でもう降参です。

「ミレイには、言いたいコト言って訊きたいコト訊く正当な権利があるんだから、堂々としてろって言ってんの。佐瀬サンが教えたくないって言ったら、教えられない理由をちゃんと訊きなよ。消化不良にしとくのが、一番サイアクなんだからね」

目を合わせ、毅然として言ったふーちゃんは。
いつも私を振り回す気ままな従兄弟じゃなく。甘やかさずに支えてくれる頼もしい従兄弟。・・・に見えたのでした。



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