恋は、秘密主義につき。
いつもどうしても。お祖父さまや両親に佐瀬さんとのことを分かって欲しい気持ちや、・・・分かってもらえなかった時の覚悟が心にあったから。
希望を膨らませて夢見るより、二人でいられる今この時を無駄にしたくない思いのほうが強かった。

これからは。
貴方にしてあげたいこと。貴方に願うこと。胸の中に仕舞っておかなくていいですか。

してもいいですか。
私と貴方の。幸せな未来に続く、ささやかな約束をたくさん。




「佐瀬さん」

「なンだ」

「今度、いつも使ってるシャンプーを持ってきてもいいですか」

ドライヤーを動かす手が一瞬止まって。
何でもないように素っ気なく。

「・・・好きに置いておきゃいい」

「じゃあ、お鍋とフライパンもいいですか?! あとできれば調味料もなんですけど!」

「・・・・・・・・・わざわざ持ってくンなよ・・・」

欲しいなら買ってやる、と億劫そうに溜息を吐いて見せた貴方が。
前髪に風を当てられ、私が目を瞑る瞬間に笑った。・・・みたいでした。



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