恋は、秘密主義につき。
「・・・・・・レイちゃんは怖がりなお姫さまで、すぐ泣きべそかいたし、ずっと俺が守ってやりたいって思ってた。10年ぶりに会っても、やっぱりそう思ったんだ」

遠くに投げかけるような呟きが届き、ぎこちなく頭を上げていく。
クラゲと一緒に淡い光りに彩られる男らしさの増した横顔を、噤んだまま仰ぎ。
ややあって征士君が私を振り返った。

「すごく口惜しいよ。もっと時間があったらとか、佐々木君に邪魔されなかったら、とか情けないこと考えてる今の自分が。・・・そういうことじゃないって、頭じゃ分かってるんだけどな」

肩で大きく息を吐き。自身に言い聞かせるように。
それから眉を下げて、ふっと切なそうに笑む。

「祖父から許嫁解消の話を聴いたあとに、保科さんから謝罪の電話をもらった」

「え・・・?」

驚いて目を見張る。
そんなこと、ひと言も・・・!

「妹の願いを叶えるのが自分の役目だから、責めるなら自分を責めてほしいって。まさか保科さんに謝られるなんて思ってなかったな。・・・それでその時に、俺からもひとつお願いしたんだ」

兄さまにお願い?
当惑している私を、征士君はどこか吹っ切れたような表情で見下ろしました。

「幼馴染みとしてこれからもレイちゃんのそばにいたい。幸せになるのを見届けるまでは、プロポーズも有効にしておいてほしいってね」
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