恋は、秘密主義につき。
なんだか今までで一番、剥き出しの心で触れられた気もしました。

家に送ってもらっている途中、どこかの路肩にいきなり車を停めた佐瀬さんは私を捕まえて、キスを貪る。
横を走り去っていく何台ものエンジン音を耳が拾うたび、ヘッドライトで二人の姿を見透かされるんじゃないかと気が気じゃなかったけれど、抗ったりはしなかった。

征士君と別れてからずっと、私を確かめたがっていたように思えて。
いつもそうして、嘘を吐けない本能(カラダ)に直接たずねるのだから。


「・・・舌出せ」

ぎこちなく差し出す。

「イイ子だ・・・」

どうぞ。貴方が満たされるまで。



最後に下唇を甘噛みして、シートに体勢を戻した佐瀬さんはそれでも物足りない表情だった。

「・・・早いとこ、ガキでも作るか」

「はい?!」

「そうすりゃ、どいつもこいつも黙るンだろーよ」

ふっと口角を上げると、私の頭をひと撫でしてシフトを入れ替える。

「さっさとオレのもんになっちまえ」

素っ気なく。ハンドルを切りながらついでみたいに。
いかにも佐瀬さんらしい『プロポーズ』。

家族になることを望んでくれる。
一緒に生きることを望んでくれる。

捨てられない過去を背負って気怠そうに、ただここに居るだけに見えた貴方が。
(うえ)を仰いで、凜とした背中を向けてくれる。

ふたりで紡いでいける。
未来を、私を、どうか信じていて。



「・・・はい」


私の返事を聞き取った佐瀬さんの横顔に、仄かな笑みが滲んだ。
どこか不敵そうで、どこか安らかな。そんな微笑みでした。




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