恋は、秘密主義につき。
11-2
日中は晴れのち曇り。夕方はところにより、にわか雨か雷雨。とても真夏らしいお天気に振り回されそうな8月3日、土曜日。
少しずつ雲行きが怪しくなってきた空の下を、一日遅れになった私の誕生日を愁兄さま達が祝ってくれるホテルへと、一実ちゃんを拾って向かっているところです。
「佐瀬サンて、スーツ着ると洒落にならないんですねー」
「・・・ホメてんだろ?」
「もちろん」
後部シートで、ぴったりと隣り合って座る一実ちゃんが、運転席の佐瀬さんに向かってニッコリと。
「そのぐらいじゃないと、ストーカー課長やシスコンお兄さんに勝てないですもんね?」
紺色地にエレガントな花柄の刺繍が施された、フィッシュテールのチャイナ風ドレスで待ち合わせ場所に立っていた一実ちゃん。髪もサイドを編み込み、後ろで一つのお団子に。
凛々しいカンフー美女の雰囲気さながら、きっと周囲の視線を釘付けにしていたに違いありません。
車に乗り込むなり、熱烈なリクエストどおりにこの間のドレス姿を再現してきた私に目を輝かせ。『やだ、食べちゃいたい!』とずっと抱きついたままの彼(彼女)に、前方からエアコンだけじゃない冷たい空気が流れているような、いないような・・・・・・。
佐瀬さんは佐瀬さんで、黒シャツに光沢のあるパステルグリーンのネクタイ、グレーのスーツベストとスラックスという、徹おじさまのパーティの時とは少し趣が違うスタイルですけれど。
溜め息を吐きたくなってしまうくらい様になっていて、24時間365日、見続けても飽きないだろうと思います。兄さまと同じく。
「今日って、先に行ってる俺様王子のほかにも従兄弟クンが来るんでしょ?」
「はい。ヨウ君とヒサ君も来られるって言ってました」
「佐瀬サンとの初対面、楽しみね」
「二人ともすごく会いたがってますよ。ヒサ君はあんまりお喋りじゃないですけど、ヨウ君はわりとふーちゃんぽいかも知れませんねぇ」
「ですって。ガンバってください、佐瀬サン?」
「・・・・・・・・・・・・」
見えていないのに。
楽しそうな一実ちゃんとは裏腹に、苦虫を嚙み潰したような表情の貴方が、手に取るように想像できてしまった私です。
少しずつ雲行きが怪しくなってきた空の下を、一日遅れになった私の誕生日を愁兄さま達が祝ってくれるホテルへと、一実ちゃんを拾って向かっているところです。
「佐瀬サンて、スーツ着ると洒落にならないんですねー」
「・・・ホメてんだろ?」
「もちろん」
後部シートで、ぴったりと隣り合って座る一実ちゃんが、運転席の佐瀬さんに向かってニッコリと。
「そのぐらいじゃないと、ストーカー課長やシスコンお兄さんに勝てないですもんね?」
紺色地にエレガントな花柄の刺繍が施された、フィッシュテールのチャイナ風ドレスで待ち合わせ場所に立っていた一実ちゃん。髪もサイドを編み込み、後ろで一つのお団子に。
凛々しいカンフー美女の雰囲気さながら、きっと周囲の視線を釘付けにしていたに違いありません。
車に乗り込むなり、熱烈なリクエストどおりにこの間のドレス姿を再現してきた私に目を輝かせ。『やだ、食べちゃいたい!』とずっと抱きついたままの彼(彼女)に、前方からエアコンだけじゃない冷たい空気が流れているような、いないような・・・・・・。
佐瀬さんは佐瀬さんで、黒シャツに光沢のあるパステルグリーンのネクタイ、グレーのスーツベストとスラックスという、徹おじさまのパーティの時とは少し趣が違うスタイルですけれど。
溜め息を吐きたくなってしまうくらい様になっていて、24時間365日、見続けても飽きないだろうと思います。兄さまと同じく。
「今日って、先に行ってる俺様王子のほかにも従兄弟クンが来るんでしょ?」
「はい。ヨウ君とヒサ君も来られるって言ってました」
「佐瀬サンとの初対面、楽しみね」
「二人ともすごく会いたがってますよ。ヒサ君はあんまりお喋りじゃないですけど、ヨウ君はわりとふーちゃんぽいかも知れませんねぇ」
「ですって。ガンバってください、佐瀬サン?」
「・・・・・・・・・・・・」
見えていないのに。
楽しそうな一実ちゃんとは裏腹に、苦虫を嚙み潰したような表情の貴方が、手に取るように想像できてしまった私です。