恋は、秘密主義につき。
街並みが一望できる、とあるホテルの一室。洗練されたセンスが漂うラグジュアリーなスィートルーム。
広々としたリビングは、寝ころんだ私が5人いてもまだ余裕がありそうな革張りのソファが置かれ、ラウンジみたいにバーカウンターもあって。

窓際の大きなダイニングテーブルには、お酒にも合いそうなオードブルの数々やフルーツ、バースデーケーキ代わりのスイーツを盛り合わせたケーキスタンドなど。ピンクや黄色の可愛らしいテーブルフラワーの周りを、隙間もないほどのお料理が並べられていました。



「美玲。23歳の誕生日おめでとう」

ベージュの三つ揃いに浅いローズマリー色のシャツ、ワイン色のネクタイという華やかな装いの愁兄さまが、グラスを片手にふわりと薫るような微笑みを隣りの私に向けると。

『おめでとう、美鈴!』

立食式でテーブルを囲むみんなも、シャンパングラスを掲げて口々にお祝いの声をかけてくれました。

「にしてもさ。まさかレイが鳴宮蹴って、ブラコン街道つっぱしるとは思ってなかったわー」

今日は、ツートンカラーのお洒落なシャツにネクタイを合わせた、カジュアルっぽいフォーマルのヨウ君が呆れ半分、感心半分に。

「だって愁一さんの同級生ってことは、ひと回り違うんだろ? それより歳下(した)が男に見えないって、逆にすごすぎ!」

「美玲が決めたんだったら、それでいいだろ」

一張羅らしい農紺のスーツにブルーグレーのシャツを合わせたヒサ君は私を見やり、きっぱりと一言。

「それはそーだけどさ。まあ、ふぅも立樹さんも納得してるみたいだし、丸く収まってよかったなー、レイ?」

『してない!』

ヨウ君が愛嬌のある顔でニンマリ笑えば。ふーちゃんとたぁ君からすかさず抗議の矢が飛んできたのでした。
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