恋は、秘密主義につき。
高速を下りると、温泉の看板や果実狩りの看板が多く目につくように。
小高い山のふもとをしばらく走っていたら、いつの間にか遥か前方まで車がずっと連なってノロノロ運転になっていた。

「早めに出てきたつもりだけど、ゴールデンウィークだからやっぱり混むな」

片手運転で、途中のコンビニで買ったペットボトルのキャップを捻りながら、征士君が思案顔で言う。

「景色を見ながらゆっくり進むのも、楽しいですよ?」

わたしもジャスミンティーで喉を潤しつつ、素直に思ったままを。
お目当ての行き先はみなさん同じ、ということでしょうか。
目的地を内緒にされている私にとっては、新鮮なミステリーツアーで。退屈には思わない。

「レイちゃんのそういうとこ、・・・好きだよ」

優しい声音で。伸びてきた掌が、やんわりとわたしの髪を撫でた。

兄さまにされるのとは、ちょっと違った気もして。
どんな風にかは、・・・上手く云えないけれど。

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