恋は、秘密主義につき。
「光栄だな。あの保科氏にそう言ってもらえるなんて」

流すように傾けた彼の笑みが、どこか愉し気に見えたのは気のせいでしょうか。

「レイちゃんのお祖父さんが許してても、彼に見向きもされないようじゃ結婚への道のりは遠いって、よく祖父にも脅されてるよ」

その他にも約1名、大騒ぎしそうな従兄弟が控えていますけど。そっと胸の内で苦笑い。

「前にレセプションで挨拶したことはあるんだ。オーラが違うって言うか、とにかく目を引く人だったな」

思い返したのか、感心したように征士君が言う。

「高そうな壁ではあるけど昇りきる自信はある。闘い方も人それぞれだって思うしね」

自分自身に向け、確かめているみたいにも聴こえた。

「レイちゃんの夫に相応しい男だ、って必ず認めてもらう。だから、目を離さないで俺だけを見てて欲しい。・・・それだけで十分だから」


赤信号に差し掛かり、滑らかに静止した車。
ゆっくりと私を振り返ったその眼差しには、揺るぎなさと。そして淡い微笑みが口許に滲んで。・・・いました。




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