恋は、秘密主義につき。
1階部分が駐車場になっている、黒っぽい外観の5階建て賃貸マンション。
3階の306号室が征士君のお部屋でした。
入社に合わせて引っ越してきたそうで、ベランダ側はお隣りとの境が完全に仕切られたプライベート性が高い造りだと、カーテンを閉めながら教えてくれました。

1LDKの間取り、独身者向き。前にお付き合いしていた圭太さんも一人暮らしだったから、こうしてお邪魔したことがあって。シンプルでモノトーン色が多いのは共通しているようです。

玄関も、靴はシューズボックスに片付けられていていたし、借りたおトイレも洗面室も、普段からお掃除や整頓が行き届いている印象だった。
きちんと自分のことは自分で出来る人なんだなって、感心した。


「座ってテレビでも観てて、レイちゃん。パスタだし、そんなに時間かからないから」

壁際のテレビラックの前にはラグが敷かれ、ガラステーブルと2人掛けくらいの脚付きソファ。仕事から帰って、ここでお酒でも飲みながら寛ぐ姿をふと思い浮かべたり。

「私もお手伝いします」

キッチンに立つ彼からの声にそう返事をすれば。
どこか照れたような、嬉しそうな笑顔が振り返ったのでした。
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