恋は、秘密主義につき。
調理台もそれなりの広さがあり、キャベツをざく切りしている征士君の隣りで、サラダ用のサニーレタスやキュウリを水洗い。
2口のIHコンロでは深鍋でお湯が煮立ち、フライパンもスタンバイされていた。

「こうやって二人で一緒に料理するの、すごく憧れてた」

甘やかな顔立ちが、さっきから輪をかけて甘さ全開の彼に。

「? 彼女さんとは、しなかったんですか?」

素朴な疑問。
ずっと好きだったと告白してくれたとは言え。年頃の男の人で、まして彼ほどの容姿なら想いを寄せてくれた女性もいて、当然お付き合いだって。

「大学の時はサークル仲間で遊んだりしてたから、女の子も友達付き合いだったな。彼女は特にいなかったんだ」

「それは・・・意外でした」

正直な感想を口にすると、少し困ったように眉を下げて私を見やる征士君。

「もしかして、遊んでた男に見える?」

「えぇと。不自由はないように見えました」

これもまた正直に。

「征士君、雑誌の読者モデルでもおかしくないくらいにモテるだろうと思ったので。・・・あ、褒めてるんですよ?」

何だか表情が曇ってしまったので、そこはちゃんと気持ちを込めて伝えておく。
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