恋は、秘密主義につき。
「初めまして、楠田美玲です。愁兄さまとは親戚で、いつも兄代わりをしてもらっています」

関係を『親戚』という大雑把な言葉で括ってしまえば、それ以上ツッコまれることはあまりありません。
目礼しつつ自己紹介をした私に、佐瀬さんは「ヨロシク」と返してくれたものの、まるで興味はない様子。

「佐瀬、もう少し愛想良くできないと今どきの若い子には嫌われるよ?」

それを見た兄さまが含み笑いで言えば。

「あー・・・、そりゃ悪かった」

そうは全く思っていなさそうな表情で、気怠げに肩を竦めてみせた。

「どっかの誰かさんほど、ツラの皮が厚くないもんでねぇ。根が素直に出来てるんだわ、オレ」

「相変わらず面白いことを言うね」

「・・・冗談に聴こえてンなら、耳鼻科に行っとくか?」

「冗談にしか聴こえてないから、心配は無用だよ」


運ばれてきた珈琲に口を付けながらテンポよく会話をしている、二人。
苦虫を嚙み潰したような佐瀬さんとは対照に、兄さまはどこか愉しそう。
どうやら喧嘩をするほど仲が良い的な、気の置けない間柄のようです。
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