恋は、秘密主義につき。
「お嬢ちゃんは、ずい分とアイツに懐いてンだな」
フロントガラスの向こうに遠く視線を投げかけたままで。答えはうやむやな佐瀬さんから、逆に。
少しハスキーな低めのトーン。・・・でも、聴き心地は悪くないと思った。
「兄さまは私が生まれた時から“兄さま”ですし、物心ついた時には“先生”でしたから。世界で一番大好きです」
13歳上で、色々なことを教えてくれた愁兄さま。人生のバイブルと言っても過言ではありません。
誰よりも尊敬して誰より信頼できる、最良の理解者で。最愛の兄。
笑顔で堂々と言い切ると、興味もなさそうに「・・・ふーん」といなされた。
そこから会話が広がる雰囲気でもなく。間に沈黙が下りて、次の質問を考える。ぽんと頭に浮かんだのは。
「・・・あの、佐瀬さんは警備会社かなにかにお勤めだったんですか?」
「なんでそう思う?」
怪訝そうな声が返る。
「格闘技が出来るって兄さまが言ってたので、護身術を習ったのかなと思ったんです。それに、足が速いっていうのは大事なことですよね」
「・・・根拠は?」
「もし悪い人に襲われた時に逃げられなかったら、困るじゃないですか。たとえお仕事でも、命より大切なものなんてありません!」
思わず、胸の前で両方の拳を握って力説。
すると次の瞬間。彼が小さく吹き出し、「ハハッ」と笑い声を立てた。
フロントガラスの向こうに遠く視線を投げかけたままで。答えはうやむやな佐瀬さんから、逆に。
少しハスキーな低めのトーン。・・・でも、聴き心地は悪くないと思った。
「兄さまは私が生まれた時から“兄さま”ですし、物心ついた時には“先生”でしたから。世界で一番大好きです」
13歳上で、色々なことを教えてくれた愁兄さま。人生のバイブルと言っても過言ではありません。
誰よりも尊敬して誰より信頼できる、最良の理解者で。最愛の兄。
笑顔で堂々と言い切ると、興味もなさそうに「・・・ふーん」といなされた。
そこから会話が広がる雰囲気でもなく。間に沈黙が下りて、次の質問を考える。ぽんと頭に浮かんだのは。
「・・・あの、佐瀬さんは警備会社かなにかにお勤めだったんですか?」
「なんでそう思う?」
怪訝そうな声が返る。
「格闘技が出来るって兄さまが言ってたので、護身術を習ったのかなと思ったんです。それに、足が速いっていうのは大事なことですよね」
「・・・根拠は?」
「もし悪い人に襲われた時に逃げられなかったら、困るじゃないですか。たとえお仕事でも、命より大切なものなんてありません!」
思わず、胸の前で両方の拳を握って力説。
すると次の瞬間。彼が小さく吹き出し、「ハハッ」と笑い声を立てた。