恋は、秘密主義につき。
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水族館は久しぶりだ。
アミューズメント施設の一画にあってそれほど大きくないけれど、リニューアルオープンしたらしく、幻想的な空間が広がっている。
悠々と泳ぐマンタやウミガメ、ムーミンに出てくるニョロニョロに似たチンアナゴ。隔てられた厚いガラス越しに、異次元の別世界を見ているよう。

もしかしたら、私達が海の生物と思ってる彼らは、じつは宇宙から来たエイリアンかも知れない。そんな想像を膨らませながら、飽きもせず水槽に喰いついている私を。急かすでもなく、他愛もない話をしながらずっと隣りに居る彼。土曜日で家族連れも多く、はぐれるからと手を繋がれたままで。


私が水族館が好きっていう情報は、きっとお祖父さま経由なんだろうけれど、上辺だけで付き合ってくれてるんだと思ったら、そうでもない気もする。
水槽を移動するごとに、どんな生き物が展示されてるのかパネルにきちんと目を向け、「へぇ、あれがそうか」って感心しきりな征士君の表情はとても自然で。特に深海生物のエリアでは釘付けになって、彼の方がしばらく動かなかったくらい。

「久しぶりに来たけど、思ってたより楽しかったな」

館内のグッズ売り場を回りながら、ラッコのぬいぐるみを手に取った征士君が無邪気な笑顔を向ける。

「次は、イルカのショーが見られるところに連れてくよ」

次、という言葉もすんなり口から滑り出てきた。
次もあるのかと、戸惑い気味に思ってしまった私。

お試しでと言われたけれど、何だかまだよく分かりません。もっとずっと一緒にいれば、ドキドキしたりときめいたり、恋心らしいものも芽生えてくるんでしょうか・・・?

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