恋は、秘密主義につき。
佐瀬さんは一瞬黙ったあと、息を吐いた気配でぼそっと呟いた。

「・・・保科といいお嬢ちゃんといい、・・・ったく」

それきりダンマリになってしまった彼は。
黄昏の景色が見慣れた街に変わり、もう間もなく私の家、って辺りでようやく口を開いてくれました。

「連絡先は保科から聴いてる。ライン入れたら確認、頼むわ。それと一日の予定はどんなのでも、オレに教えるのを忘れてもらっちゃ困る。知らずに振り回されるのは真っ平なンでね」

「はい。分かりました」

相変わらず前しか見ていない彼の口調が、それまでと違って少し硬い。
しっかりと頷いて返した。

「これからはお嬢ちゃんが出かける時は、もれなくオレも付いてくる。給料分の仕事はこなしてやるから、まあお互いサマってことで。ヨロシク、お嬢ちゃん」

億劫そうに素っ気なく言われたけれど。

悪い人じゃない。第2の直感。
兄さまの友達だからってだけじゃなくて。・・・なんでしょう。
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