恋は、秘密主義につき。
パパとママには、愁兄さまからとうに連絡済みで。顔を合わせるなり、ママに至っては。

「ボディガードだなんて、刑事ドラマみたいでドキドキしちゃうわ~っ」

うっとりと瞳を潤ませながら、ちょっと遠くに行ってしまってます。

「まあ愁一君の知り合いなら安心だし、迷惑かけないように美玲も気を付けるんだよ?」

パパは相変わらず、のんびり笑顔で。



夜になって、ちゃんと気遣いの電話をくれた兄さま。

『ああ見えても、一度引き受けたことは簡単に投げ出したりしない男だから』

スマートフォン越しに響いてくる、柔らかな声。

『きちんと役目は果たしてくれるはずだよ。安心して、美玲』

「はい、兄さま。大丈夫ですよ。それは心配してないです」

『・・・そう。それなら良かった。佐瀬とはちゃんと話が出来たのかな?』

思い浮かぶ気怠げな横顔。
手を伸ばしかけて、でも届かずに空を掴んだ。そんな手応え。
上手く言えないけれど、もどかしかった気もして。

「それほど話せなかったので・・・。次は頑張りますね!」

何かを振り払うように明るく声を張った。

『そんなに気負わなくても大丈夫。美玲を守るのに最低限のコミュニケーションが取れているなら、問題はないからね。佐瀬と仲良くなる必要はないんだよ』

向こう側で微笑まれた気配に、「分かりました」と頷きながら。
ふと頭の隅を掠めました。


でもやっぱり、もう少し手の届くところまで近づきたいな。・・・って。






< 73 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop