恋は、秘密主義につき。
「じゃあ、帰りはきっちり送ってもらいなよ?」

送ってもらいなよ?、・・・って誰にでしょう? きょとんと首を傾げる。

「後ろのオッサンにさ」

「?」

ふーちゃんの視線を追うように振り返った私。
いつの間にってくらい真後ろに、黒いシャツ姿の佐瀬さんが立っていたので目を丸くして固まってしまった。

「・・・あの。いつから、いたんでしょう、か・・・?」

この間よりは、ぼさっとしていない髪。顎ヒゲと、気怠そうな雰囲気は相変わらずで。
私の質問に先に答えたのは、ふーちゃんだった。

「朝から。じゃなきゃ、ボディガードの意味ないじゃん」

そのことは話してなかったのに、知っていたふーちゃんにも驚いて。顔が行ったり来たりです。

「愁兄から聞いたから、どのくらい出来んのかと思ってたけど。悪くは無さそうだね、・・・アンタ」

上から目線で口角を上げて見せたふーちゃんは。私を通り越して、挑発的な眼差しを無遠慮に佐瀬さんにぶつける。

「その調子で役に立ってよね。使えないなら要らないし、ミレイに何かあったら、殺すよ?」

「ふーちゃんっ、そんな言い方ダメですってばっ」

物騒な言葉を使うのはふーちゃんの悪い癖。どうしてか、彼をそんな風には言って欲しくないと思ったから。考えるより先に口から飛び出していた。

「佐瀬さんは、ちゃんとやってくれます! 兄さまだってそう言ってましたし・・・っっ」
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