恋は、秘密主義につき。
爽やかで甘やかな征士君の人柄もあって、和やかに食事会も進み。
手土産でいただいた生カステラケーキをデザートに、話も弾みます。
もちろん、一番弾んでいるのはママです。征士君の今のお仕事やご両親のことを、さり気なく根掘り葉掘り。愁兄さまに刺された釘はどこに忘れてるんでしょうか。

「そう言えば、征士君のお誕生日は26日だそうですよ」

思い出して、うっかりその場で口を滑らせた私。
ママがキラリと瞳を輝やかせたかと思えば。

「あらまあ。それじゃ美玲がお祝いしてあげなさいな、二人でゆっくり。・・・ね?」

『ね』?
慎ましやかな、けれど企んだような笑顔でにっこりと。
『あちらのご両親と一緒に食事を』だとばかり思っていたので、意味を飲み込むのに数秒かかった。

「えぇと・・・、そうですね。征士君が良ければ」

「ありがとう、レイちゃん。楽しみにしてるよ」

ママのお膳立て感が満載なのに、征士君はそれすら嬉しそうに。

こういう場合、友達としてお祝いするものなのでしょうか。
付き合っていると言っても、お試し期間中の私達。
一実ちゃんに相談しなくちゃと、頭の隅にしっかりと残したのでした。
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