恋は、秘密主義につき。
「愁兄さまにプレゼントしてもらったのが最初なんですけど、ふわふわした手触りが大好きで。見かけるとつい欲しくなっちゃうから、最近は我慢しているんです」

「我慢?」

首を傾げられて、少し照れ笑いで返した。

「クローゼットの中で寝てる子もいるのに、これ以上増やしたら可哀そうなので」

「なるほどな」

他に腰掛けるところもなく、カバーを掛けたベッドの端に座ってもらいながら。微妙な距離を取って、私も隣りに。

二人きりなのは初めてじゃないのに、何を話せばいいのかと、どことなく緊張している自分に戸惑う。

「そうだ。レイちゃんの卒アル、見たいな」

自然体の笑顔でそう言われて、解れた糸。
ページをめくっていくうちに、気兼ねなく笑い合えていた。


風みたいな人。征士君は。
いつの間にか、躊躇いだとか臆病な気持ちを、浚って消してしまうから。
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