恋は、秘密主義につき。
最後は軽く啄んで、唇から離れた彼。
目が合って。急に恥ずかしさが沸き上がった。
頬に熱が集まり、狼狽え気味に視線を泳がせると。クスリと笑まれる。

「可愛いな。やっぱり」

困ったように小さく首を横に振るだけの私。

「・・・好きだよ、レイちゃん」

ふわり。抱き締められた。

「許婚の立場を利用してるって思われてもいい。・・・でも、俺は本気で好きだ。全力で証明してみせるし、簡単に諦めもしない」

私をすっぽり包んだ腕に力が籠る。
あの公園でも真剣に言ってくれたこと。

「レイちゃんをもっと振り向かせて、俺だけを好きにさせる。覚悟しておいて」

耳の上あたりで聴こえた声に、清々しくきっぱりと告げられた。


ここからは本気で俺に向き合って。
・・・心臓に真っ直ぐ突き付けられた。気がした。

そうしないのは征士君に対する不誠実だから。
ちゃんと答えを探すために。目を逸らさないで。

胸の中で、きゅっと気持ちを握り込んだ私だった。

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