キミのもの
店を出たら、当然のように蒼真くんが待っていた。


ほんっと毎日毎日、懲りずに待ち伏せ、ご苦労様です。


「あ。比奈子、お疲れーって……なにソイツ。浮気?」


蒼真くんは、一緒に出てきた同僚の彼を見て、予想通り不満げな声を上げた。


「同僚。てゆーか浮気って意味わかんない」


「はあ?浮気じゃん。つーかなに?ソイツと一緒に帰んの?」


うわー、めんどくさい。


「蒼真くんには関係ないでしょ。じゃーね」


まだ何かブーブー文句を言っていたけれど、とりあえず放置して公園に向かうことにした。




「さっきのヤツって、比奈子ちゃんの彼氏なの?」


公園に着いてベンチに座ると、彼がさっそく、蒼真くんのことを訊いて来た。


「違うよ、ただの」


友達って答えようとして、思わず口ごもる。


友達じゃないし。


蒼真くんって、私の何?


まあ、端的に言えばただのストーカーなんだけど。


「……ただの幼馴染」


ちょっと違う気がするけど、そう答えるのが無難な気がした。


「へえ」


「で、話ってなに?」


「あのさ。比奈子ちゃんって彼氏とかいんの?」


「いないけど。なんで?」


「オレと付き合わない?」


「は?」


まさかの交際申し込み。


苦手な相手に好かれるの得意かよ、私。


「オレ、比奈子ちゃんみたいな女の子、すげータイプなんだよね」


私、全然タイプじゃないです。


「……えーっと、お断りします」


「え、なんで?好きなヤツでもいんの?」


「そんなんじゃないけど、私今、彼氏とか別に欲しくないし。ごめんなさい。じゃ、私帰るね」


そう言って立ち上がった私の腕を、彼ががっちりと掴んだ。
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