キミのもの

◇◆◇◆◇


やべー、もう比奈子のバイト、終わる時間じゃん!


部活が終わって、いつも通り比奈子がバイトしてるコンビニに向かおうとしたら、校門で待ち伏せしてた1年の女子に捕まった。


「桐谷センパイ、好きです!」


なんて、目うるうるさせて言われたら、無下にもできない。


自分で言うのもなんだけど、俺は結構モテる。


母親譲りの綺麗な顔立ちな上に、サッカー部のエースだからかね。


まあ、女の子にモテるのは悪い気しない。


でも俺は、昔から比奈子ひとすじ。


比奈子のこと好き過ぎて、苛めてたくらいだからね。


「ありがとう、でも俺、好きな子いるから」


「……あの、私!2番目でもいいんで」


丁重に丁重にお断りしたら、ちょっとゴネられて面倒だった。


2番目ってなんだよ、意味わかんねーし。


「ごめん!俺、今からデート!」


そう言って、俺は走り出す。


全然デートじゃねーけど。


俺が一方的に会いに行ってるだけだけど。


比奈子は学校帰りに、俺の家の近所のコンビニで3時間だけバイトしてる。


比奈子と俺は違う高校。


だから、比奈子のバイト先くらいでしか会えない。


部活の練習ですっかり疲労した身体にムチ打って、俺は比奈子の店までダッシュする。


もう間に合わない気がするけど。
< 6 / 18 >

この作品をシェア

pagetop