キミのもの
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やべー、もう比奈子のバイト、終わる時間じゃん!
部活が終わって、いつも通り比奈子がバイトしてるコンビニに向かおうとしたら、校門で待ち伏せしてた1年の女子に捕まった。
「桐谷センパイ、好きです!」
なんて、目うるうるさせて言われたら、無下にもできない。
自分で言うのもなんだけど、俺は結構モテる。
母親譲りの綺麗な顔立ちな上に、サッカー部のエースだからかね。
まあ、女の子にモテるのは悪い気しない。
でも俺は、昔から比奈子ひとすじ。
比奈子のこと好き過ぎて、苛めてたくらいだからね。
「ありがとう、でも俺、好きな子いるから」
「……あの、私!2番目でもいいんで」
丁重に丁重にお断りしたら、ちょっとゴネられて面倒だった。
2番目ってなんだよ、意味わかんねーし。
「ごめん!俺、今からデート!」
そう言って、俺は走り出す。
全然デートじゃねーけど。
俺が一方的に会いに行ってるだけだけど。
比奈子は学校帰りに、俺の家の近所のコンビニで3時間だけバイトしてる。
比奈子と俺は違う高校。
だから、比奈子のバイト先くらいでしか会えない。
部活の練習ですっかり疲労した身体にムチ打って、俺は比奈子の店までダッシュする。
もう間に合わない気がするけど。