キミのもの
「なーにしてんの?」


俺は声をかけながら、買って来たコーラを、背後から比奈子の頬にピタッと当てる。


「ひゃっ!冷たっっ!……って、そ、蒼真くん?!」


驚いて振り返った比奈子は、俺を見てさらに驚いた声を上げた。


「お店来なかったのに、なんでいるの?」


「野暮用。とりあえずダッシュでここまで来たんだけど」


「え、わざわざ走ってきたの?」


「うん、だからちょっと隣座っていい?俺もうクタクタ」


「……あー、うん。どうぞ」


お、珍しい。


いつも隣に座ろうとすると、拒否られるんだよね。


「はい、あげる」


隣に座った俺は、コーラの缶を差し出す。


「え、それ蒼真くんのでしょ?」


「いーのいーの。……つーか比奈子、なんかあった?」


「え、なんで?」


「海より深いため息ついてたからさ」


「……別に、なんでもないよ」


俺のコーラをありがと、と言って受け取った比奈子は、コーラの栓を抜きながら、やっぱり元気ない声で答えた。


つーかそんな元気なくて、なんもないことなくね?


そんなん、わかるっつーの。


どんだけ比奈子のこと、見てると思ってんの?
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