そのままの君が好き〜その恋の行方〜
俺が小学校低学年からやってきた野球を、辞めようと決めたのは、高校3年生の夏。県予選準決勝で敗れ、我が校の4年連続の夏の甲子園大会出場の可能性が潰えた時だった。


憧れのエ-スナンバ-1を背負い、最後の夏に挑んだ俺だったが、準決勝はまさに完敗。大好きな野球に未練が全くなかったと言えば、嘘になるが、この先プレ-ヤ-としての自分に正直、可能性を見出すことが出来なかった。


後輩達の手で、新チ-ムが動き出したのを見届け、退部届を提出した俺は、それからは半年後の大学受験に備えて、勉強に明け暮れる毎日を過ごした。


その甲斐あって、志望校であるH大に無事合格。思い出の詰まった高校と、一緒に汗を流した仲間達に別れを告げて、新たな環境に胸躍らせて、大学の門をくぐったのが、つい最近のことのようだ。


主に同い年の連中とばかり付き合い、行動範囲も、生活環境も似たような人間ばかりの集まりだった高校までと違い、大学という所は、生まれた場所もバラバラ、同学年でも違う年齢の人間がいて、クラス単位の行動などほとんどなく、カリキュラムもある程度自分で組む。


いろいろな制約があった高校までとは一転、本当に「自由」であった。それまでの自分の中であまりにも大きな割合を占めていた野球がなくなり、喪失感を味わうかと思っていたが、全くそんなことはなかった。


サ-クル活動や授業を通じて、新たな仲間も出来たが、高校時代の大袈裟でなく苦楽を共にした多くの野球部の仲間達とは、確かにもう毎日のように会うことは出来なくなってしまったが、折に触れ、連絡を取り合い、定期的に会っては、バカをしながら過ごした。


そして、俺の大学生活を彩った、最も重要なもの、それは恋だった。
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