そのままの君が好き〜その恋の行方〜
その時、俺は確かに三嶋と一緒にいた。それはアイツが異動して行ってから、最初の土曜日。休日にアイツと2人で会うのは、初めてだった。


昼に待ち合わせた俺達。初めて見る三嶋のプライベート姿は可愛かった。


「さっそく総一郎が誘ってくれるなんて、思ってもみなかった。さ、行こう。」


そう嬉しそうに言うと腕を組んでこようとする三嶋を


「バカ、よせ。」


と振り払う俺。


「もう、照れちゃって。」


とからかうように笑って、三嶋は俺の後を追って歩き出す。これは傍から見たら、きっとデート。三嶋もそのつもりだったろう。


この1週間、本人の宣言通り、アイツからのアタックは凄かった。俺の勤務形態を把握してるから、退社すれば、見計らったかのように電話は来る。メールもひっきりなしだ。他愛のないことを送って来ては、俺と会話を繋げようとする。


問題は、それが勤務時間内でも送られてくることだ。つい、この前まで、三嶋と勤務時間にメールすることは確かによくあった。でもそれはあくまで、業務に関することであり、今の俺達にはもう必要のないことのはず。


三嶋が抜け、右も左もわからない新人とコンビを組んで、正直今の俺には余裕がない。アイツだって、引き継ぎに行って、ちんぷんかんぷんだったと俺に嘆いていたはず。浮かれてる暇はないはずだ。


電話やメールで、何度かたしなめたけど、効き目がない。俺の知ってる三嶋は、こんなケジメのないヤツじゃなかった。


俺は決心した。昨日の夜、明日会えないかと聞いたら、三嶋は大喜びしてた。この電話で伝えることも考えたけど、やっぱり会って直接話すべきだと思った。


俺達は横浜にある動物園、ズーラシアに向かった。三嶋が一緒に行きたいと言ったからだ。子供っぽい趣味だなと思ったけど、三嶋らしいという気がした。


閉園時間は16時半、ちょうどいい時間だ。俺達の最初で最後のデートを終わらせるには。


無邪気に動物達を見て喜ぶ三嶋は、はっきり言って可愛い。コイツにコクられた時、全く心が揺らがなかったと言えば嘘になる。


だけど、あれから1週間。俺の答えは、決まっていた。
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