そのままの君が好き〜その恋の行方〜
沖田くんとの通話が終わったあと、私はまたベッドに潜り込んだ。涙が溢れて来て、どうにもならなかった。


沖田くんからは、すぐに折り返しが来たけど、取ることなんか出来ない。メールも読みたくない。


和樹さんからのそれも相変わらず。それすら鬱陶しくなった私は、ついに携帯の電源を落とした。


ショックだった、まさかあの沖田くんが・・・。高校時代から、その誠実な人柄は信頼していた。だからこそ、1度振られても、もう1度、と思えたのに・・・。


和樹さんの


「俺を信じて欲しい。」


という言葉も、素直には受け取れなくなっていた。私は、昨日の軽率な自分を激しく後悔し、罵った。


心も頭の中も、グチャグチャのまま、また一夜を過ごした私。なんで、今日も仕事休みなんだろう。このままじゃ、私、どうにかなっちゃう。


誰かに話を聞いて欲しかった。でも、こんな話、誰に出来るの?


ベッドから跳ね起きた私は、シャワーを浴びると、そのまま家を飛び出した。これ以上、家に閉じこもっていることに耐えられなかった。


一昨日とは打って変わった快晴の朝。行くあてもないまま、歩き出そうとする私の前に、立ちふさがる影。誰?って顔を上げた瞬間、私は息を呑んだ。


「沖田くん・・・。」


明らかに憔悴した沖田くんの姿が、そこにあった。


「桜井さん・・・ゴメン、こんな朝早く。非常識なのはわかってたけど・・・。」


「まさか、一晩中、ここで・・・。」


驚いて尋ねる私に、沖田くんは首を横に振る。


「さすがに、それじゃ、不審者として通報されちゃうよ。朝一で家を出て・・・着いたのはいいけど、いくらなんでも早過ぎるから、待たせてもらってた・・・。」


ボソボソとそんなことを言う沖田くんの姿を、私は複雑な気持ちで見つめる。


「こんな早く、どこ行くんだよ?そんなに目を腫らして・・・。ゴメン、僕のせいだよな。」


「・・・。」


「頼む、話を聞いて欲しい。実は・・・。」


「待って!」


「桜井さん・・・。」


「いくらなんでもここじゃ・・・。一緒に来て・・・。」


家の前で、それも、こんな朝っぱらからする話じゃない。でも、今の沖田くんの思い詰めた表情を見た時、彼だけを悪者にして、悲劇のヒロインを気取るような卑怯な真似は、やっぱり出来ない。


私は覚悟を決めた。
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