そのままの君が好き〜その恋の行方〜
私は、自宅近くの公園に、沖田くんを誘った。日曜の朝の公園は、散歩しているお年寄りの姿くらいで、人もまばらだった。


私は、手頃な場所で、沖田くんと向き合った。


「桜井さん、昨日はゴメン。だけど聞いて欲しいんだ。実は・・・。」


「沖田くん、もういい。もういいの。」


またしても、私に話を遮られて、表情を歪める沖田くん。


「沖田くんと三嶋さん、お似合いだと思う。仕方ないよ・・・。」


「違うんだよ。桜井さん、頼むから・・・。」


「それに、沖田くんを責める資格なんか、私にはないから・・・。」


「桜井さん・・・。」


その私の言葉に訝しげな表情になる沖田くん。そんな沖田くんの顔が正視出来ずに、私は思わず俯く。


「私が、昨日沖田くんに電話したのは、あなたにごめんなさいと、さよならを言う為だった。私・・・好きな人が出来た。」


その私の言葉に、沖田くんは息を呑んだのが、感じられた。辛かったけど、私は懸命に顔を上げた。


「あなたとお付き合いさせてもらってたのに、私・・・その人ともう、後戻り出来ない関係になってしまった。」


その言葉の意味を察した沖田くんは、愕然と私を見る。


「ごめんなさい、本当にごめんなさい。私、あなたのことが好きでした。1度振られてたから、臆病になって、ちゃんと伝えられなかったけど、でも好きでした。なのに・・・その想いを貫くことが出来なかった。許して下さい。」


言葉を失って、ただ立ち尽くす沖田くん。


「だから、あなたが罪の意識を私に抱く必要なんか全くないの。私のことなんか、もう気にしないで、三嶋さんと幸せになって。お願いします。さようなら、沖田くん。」


深々と頭を下げて、私は走り出した。


(また、かよ・・・。)


走り去る桜井さんの後ろ姿を俺は、ただ茫然と見送るだけだった。あの時と同じ、俺は彼女を追うことも、引き止めることも出来なかった。


(簡単に言ってくれるなよ、幸せになってくれなんて。俺は・・・機械じゃねぇんだよ!)


桜井さんとキチンと向き合うことに、こっちも臆病でいる間に、俺は大切な人を誰かにさらわれてしまった。俺を不誠実な男と思い込んだまま、桜井さんは去って行った。


自業自得と言われれば、それまで。でも、こんな最悪な振られ方って、あるか・・・。


このあと、その日、どんな風に過ごしたか、俺の記憶は全くない・・・。
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