そのままの君が好き〜その恋の行方〜
「加奈、由夏はあなたのこと、本当に心配してるんだよ。悪く思わないで。」


「わかってる。前回会った時に由夏から警告されてたんだよ。でも、私はそれを聞かなかった。それは悪かったと思ってる。」


「加奈・・・。」


「だけど、悠。これだけはわかって欲しい。彼はいい加減な気持ちじゃないし、私だって、ただ雰囲気に酔って、彼を受け入れたんじゃない。」


「加奈が選んだ人だから、あなたをもて遊ぶような人じゃないと思ってるよ。出来れば、応援したいとも思ってる。でも・・・厳しいことを言うようだけど、『好き』だけじゃ、どうにもならないことがあるのも、残念だけど事実なんだよ。」


悠は私を静かに見る。


「私はさ、一応幼稚園の先生目指してたし、今は2人の子供のお母さんだから、どうしても子供のことを考えちゃうんだけど。」


「うん。」


「5歳になるんだっけ?相手の方のお子さん。」


「今度、誕生日が来るとね。」


「可愛い盛りだよね、ママにもまだまだいっぱい甘えたい年頃。寂しいだろうね。」


そう言うと、悠は表情を曇らせる。


「そんなところに加奈が現れた。加奈みたいな優しいお姉ちゃんが出来て、その子は嬉しいと思うよ。だけど、さっき由夏も言ってた通り、やっぱりママとは違う。」


「でも・・・。」


「うん。愛情があれば、それは乗り越えられるかもしれない。だけど、私が気になるのは、その後のこと。」


「その後のこと・・・?」


私は悠の顔を思わず、見つめる。


「加奈は結婚したら、子供欲しくない?」


「もちろん欲しいよ。」


「そうだよね。小さな子供って、誰でも可愛いけど、自分の子供って、当たり前だけど、格別なんだよ。あんな苦しくて、痛い思いして産んで、夜も昼もなく、おっぱいあげて、ミルクもあげて、おしめも換えてあげて・・・。もちろんそれはママ1人の仕事じゃないけど、ママしか出来ないこともあるのは事実。辛くて、大変で、泣きたくなることもある。でも自分の子供だから、愛する旦那さんとの子供だから、頑張れるんだ。」


まさに今、その渦中にある悠の言葉には、抗い難い説得力が感じられる。


「そんな風に、愛情を込めて、育てた自分の子供と、旦那さんの連れ子に同じような愛情を注ぎ込むって、そんなに簡単なことじゃないんじゃないかな・・・。」


その悠の言葉に、ハッとする私。


「冷たいこと言う奴って、思われちゃうかもしれないけど、もし自分の身に、そういうことが降り掛かって来た時、そんなの大丈夫だよって言い切る自信、私にはないな・・・。」


「・・・。」


「恋愛も結婚も、大切なのは、まずはお互いの気持ちであることは間違いないと思うけど、加奈達の場合は、残念だけど、それだけじゃ、走り出せない。その現実と、まずはキチンと向き合わないと、由夏が心配する通り、加奈が辛い思いをするだけの結末になっちゃうんじゃないかな。」


言い方の違いはあれ、私のことを親身になって思ってくれている2人の親友の気持ちが、心に沁みた。
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