そのままの君が好き〜その恋の行方〜
「そろそろ飯にするか。」
「ええ。あそこにファミレスがありますよ、どうですか?」
「ノープロブレム。」
その俺の返事に、井口は吹き出しながら、ハンドルを切った。
(懐かしいな・・・。)
井口は知る由もないが、このファミレスにはちょっとした思い出がある。
ちょうど去年の今頃、取引先巡りをしていた俺は、やっぱり昼食を摂ろうと立ち寄ったここで、偶然桜井さんと再会した。
それから1年、まぁいろいろあった。仕事の方は、自分で言うのもなんだが、そこそこ順調じゃねぇかな。
だが、せっかく付き合い出した桜井さんに、自分がグズグズしてる間に、振られてしまったのは、正直堪えた。1度はこっちが生意気にも振ってからの、リチャレンジだったが、今は、彼女の幸せを祈るしかない。
そして、その時、一緒だった三嶋との関係も、当時とはだいぶ変化した。
「そう言えば、最近三嶋先輩、あんまり連絡がないんじゃないですか?」
「ああ。なんか海外出張らしいぜ。」
「へぇ。」
「なんでも、ビッグプロジェクトが動き始めてるそうで、三嶋もそのメンバーに入ったそうだ。とにかくアイツの語学力は半端じゃないからな。アイツの能力を遺憾なく発揮出来る、いいチャンスだと思うぜ。」
三嶋から連絡を受けた時、俺は我が事のように嬉しかった。いろいろ励ましたあと、俺は言った。
「これがいい機会だ。そろそろお互い前を向いて行こうぜ。」
その俺の言葉に、三嶋は一瞬、息を呑んだが、やがて言った。
「うん、そうだね。実は正直、ちょっと期待してたんだけど、総一郎・・・ううん沖田さんはやっぱり私に興味ないみたいだし。」
「スマン。本当を言うと、俺もお前の明るい声で、沈んだ気持ちを癒やされてたんだよ。お前のこと、考え直したのも事実。でも、お前に逃げ込むのは、やっぱり違うと思っちまって・・・。」
「逃げ込んでくれればいいのに・・・そんなに私って魅力ない?」
ちょっと悲しげな三嶋の声に、俺も心が痛む。
「そんなことねぇよ。だけど・・・なんと言うか、やっぱりお前のこと、妹にしか思えないんだ。許してくれ。」
「とりあえず、わかりました。ではお兄様、これから可愛い妹は、初の海外出張に行って参ります。エールをお願いします。」
懸命に明るい声を出しているのが、バレバレで可哀想になるが、俺は気付かぬ振りをして言った。
「気をつけてな。とにかく精一杯、やって来い!」
「はい。では、言って参ります。帰って来たら、また連絡します。」
「おい、三嶋・・・。」
「だって私、妹なんでしょ?カレカノは別れたら終わりだけど、兄妹は一生だよ。」
イタズラっぽく、そう言われて、ちょっと絶句してしまう。
「大丈夫。ちゃんとわきまえるから、心配しないで。向こうで青い目の彼氏でも探してくるよ。お土産、楽しみにしててね。じゃ、おやすみ。」
そんな会話を交わした数日前。アイツはアイツなりに前を向き始めたんだろう。俺も負けちゃ、いられない。
(三嶋、気をつけてな。俺はまたしばらく、仕事を恋人にして頑張るわ。)
「ええ。あそこにファミレスがありますよ、どうですか?」
「ノープロブレム。」
その俺の返事に、井口は吹き出しながら、ハンドルを切った。
(懐かしいな・・・。)
井口は知る由もないが、このファミレスにはちょっとした思い出がある。
ちょうど去年の今頃、取引先巡りをしていた俺は、やっぱり昼食を摂ろうと立ち寄ったここで、偶然桜井さんと再会した。
それから1年、まぁいろいろあった。仕事の方は、自分で言うのもなんだが、そこそこ順調じゃねぇかな。
だが、せっかく付き合い出した桜井さんに、自分がグズグズしてる間に、振られてしまったのは、正直堪えた。1度はこっちが生意気にも振ってからの、リチャレンジだったが、今は、彼女の幸せを祈るしかない。
そして、その時、一緒だった三嶋との関係も、当時とはだいぶ変化した。
「そう言えば、最近三嶋先輩、あんまり連絡がないんじゃないですか?」
「ああ。なんか海外出張らしいぜ。」
「へぇ。」
「なんでも、ビッグプロジェクトが動き始めてるそうで、三嶋もそのメンバーに入ったそうだ。とにかくアイツの語学力は半端じゃないからな。アイツの能力を遺憾なく発揮出来る、いいチャンスだと思うぜ。」
三嶋から連絡を受けた時、俺は我が事のように嬉しかった。いろいろ励ましたあと、俺は言った。
「これがいい機会だ。そろそろお互い前を向いて行こうぜ。」
その俺の言葉に、三嶋は一瞬、息を呑んだが、やがて言った。
「うん、そうだね。実は正直、ちょっと期待してたんだけど、総一郎・・・ううん沖田さんはやっぱり私に興味ないみたいだし。」
「スマン。本当を言うと、俺もお前の明るい声で、沈んだ気持ちを癒やされてたんだよ。お前のこと、考え直したのも事実。でも、お前に逃げ込むのは、やっぱり違うと思っちまって・・・。」
「逃げ込んでくれればいいのに・・・そんなに私って魅力ない?」
ちょっと悲しげな三嶋の声に、俺も心が痛む。
「そんなことねぇよ。だけど・・・なんと言うか、やっぱりお前のこと、妹にしか思えないんだ。許してくれ。」
「とりあえず、わかりました。ではお兄様、これから可愛い妹は、初の海外出張に行って参ります。エールをお願いします。」
懸命に明るい声を出しているのが、バレバレで可哀想になるが、俺は気付かぬ振りをして言った。
「気をつけてな。とにかく精一杯、やって来い!」
「はい。では、言って参ります。帰って来たら、また連絡します。」
「おい、三嶋・・・。」
「だって私、妹なんでしょ?カレカノは別れたら終わりだけど、兄妹は一生だよ。」
イタズラっぽく、そう言われて、ちょっと絶句してしまう。
「大丈夫。ちゃんとわきまえるから、心配しないで。向こうで青い目の彼氏でも探してくるよ。お土産、楽しみにしててね。じゃ、おやすみ。」
そんな会話を交わした数日前。アイツはアイツなりに前を向き始めたんだろう。俺も負けちゃ、いられない。
(三嶋、気をつけてな。俺はまたしばらく、仕事を恋人にして頑張るわ。)