そのままの君が好き〜その恋の行方〜
8月もあと数日となった。半月前の私に続いて、絵里ちゃんが5歳の誕生日を迎えた。


どこか、記念になる所へ連れてってあげて、帰りは食事でも、そう思った私は、和樹さんにネズミさんパークを提案した。ところが、和樹さんは


「実は・・・去年の絵里の誕生日、家族でそこに行ったんだ。たぶん絵里も覚えてるだろうから・・・。」


と複雑な表情で言う。気まずい空気が流れるが、知らなかったんだから、仕方がない。


「どうかな?昼間は動物園にでも連れてって、夜はウチで好物のフライドチキンとケーキでお祝いってことで。本人は、それで十分満足すると思う。」


果たして、絵里ちゃんに聞くと


「やった〜。絵里、パンダさんが見たい」


と大喜び。こうして上野行きが決定した。


当日、手分けして作ったお弁当を持って、待ち合わせ場所に集合した私達。


「おはよう、加奈ちゃん。パンダさん、楽しみだな〜。」


夏の日差しはジリジリと焼け付くようだったけど、絵里ちゃんは元気いっぱい。


「今日はよろしくな。」


「こちらこそ。」


そんな挨拶を交わして、私達は出発した。


お目当てのパンダは、かなりの行列だったけど、絵里ちゃんは大興奮。そのあとは、ゾウやキリン、ライオンと言った定番の動物達を見て回る。


日陰を探すのが、ちょっと大変だったけど、お昼のお弁当タイム。出来が少々心配だったけど


「加奈ちゃん、おいしい〜。」


と満面の笑みで褒めてくれるから、思わず抱きしめてしまう。


そして、さっき売店で買っておいたパンダのぬいぐるみをバースデープレゼントとして渡した。


「ハッピーバースデー、絵里ちゃん。」


「ありがとう。パパ〜、加奈ちゃんからもらったよ。」


「よかったな。なんかすまなかったね。」


「とんでもない。喜んでもらえて、よかった。」


そう言って笑顔を交わし合う私達。


「ねぇ、パパのプレゼントは?」


「パパのは、おウチに帰ってからだ。」


「わぁ、楽しみ。」


このあと、また動物を見て回った私達が動物園を後にしたのは、午後3時くらい。そのあと、買い物をしたりして、和樹さんのマンションに着いたのは、5時を過ぎていた。


「すまないね、全部持たせちゃって。」


「大丈夫。」


途中で寝てしまった絵里ちゃんを抱っこしている和樹さん。私が荷物を持つのは当然だ。


私達はエレベーターを降りた。
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