そのままの君が好き〜その恋の行方〜
授業が終わって、友達とメシを食いながら、ウダウダしゃべって帰って来たから、もう夜の10時近くだったと思う。


家に入ろうとした俺は、フッと人の気配を感じて、立ち止まった。こんな時間に誰だろうと思って、その方を見て驚いた。そこに立っていたのは


「唯ちゃん。」


なんと制服姿の唯だった。


「お帰り。」


いつもの明るさなど全くなく、しょげてるというか、なんというか、とにかく何かを思い詰めたような表情の彼女がそこにいた。


「どうしたの、こんな時間に?」


慌てて聞く俺に


「ソウくんこそ、こんな時間まで何してたの?」


と厳しい表情で聞き返す唯。


「いや、友達とメシ食って帰って来たんだよ。唯ちゃんはなんで・・・。」


「女の子?」


「えっ?」


「その友達って女の子なの?」


そう言って、俺をまっすぐ見る唯。


「ち、違うよ。」


戸惑いながら答える俺に


「じゃ、唯のこと嫌いになったの?」


「唯ちゃん・・・。」


「なんで全然連絡くれないの?卒業しても連絡してねって約束したじゃない!ずっと、ずっと待ってたのに・・・。」


そう言った唯の目から、みるみるうちに涙があふれて来て、俺は慌てる。


「ソウくんのウソつき!」


そう言い放って、駆けだそうとする唯の手を、俺はとっさに掴んだ。


「唯ちゃん!」


「ソウくんのバカ!ソウくんなんて大っ嫌い!!」


そう言って、俺を恨めし気ににらむ唯。そんな唯を俺は思わず抱き寄せた。あとでよくあんなこと出来たなって自分で思ったけど、その時は夢中だった。


「身体冷え切ってるじゃないか。いつからここに立ってたんだよ。」


「ソウくんに会いたかったんだもん、ソウくんの声が聞きたかったんだもん。」


「じゃ、電話くれればよかったじゃないか。」


「ソウくんはなんにもわかってない。ソウくんは意地悪だよ。」


そう言って、泣きじゃくる唯を、俺は困惑しながらも、懸命に抱きしめていた。


「ごめん、ごめんな唯ちゃん・・・。」
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