そのままの君が好き〜その恋の行方〜
『もう恋愛はいいって、加奈は言ってる。だけど・・・沖田くんなら、そんな加奈を包んであげられるんじゃないかなって・・・。』
「岩武さん。申し訳ないけど、今更僕がノコノコ出て行っても、桜井さんが喜ぶとは思えないよ。僕は彼女に不誠実な男だと思われてるし。だいたい大切なものを失った時、例えどんなに、似ているものを与えられたとしても、それは絶対に代わりなんて、なりはしないよ。」
『・・・。』
「とにかく僕達は、縁がなかったとしか言いようがない。だから、ゴメン・・・。」
岩武さんの話の腰を折るように、そう言うと
『そうだよね・・・確かにそうだよね。それに、今更加奈を許してなんて、虫が良すぎるよね。沖田くんの気持ちも考えず、加奈だって、あなたには知られたくないはずのことをペラペラしゃべっちゃった・・・。私の方こそごめんなさい。聞かなかったことにして。じゃ、失礼します。』
彼女は力なく、通話を切った。
それから、俺はまた変わらずに、年の瀬の慌ただしい日々を過ごして行った、表面上は。
だけど、その内側では、沸々と湧き上がって来るものを抑えるのに必死だった。それが何なのか、自分でもよく判っていなかった。
聞かなかったことにして、と岩武さんは言った。自分もそうするつもりだった。聞いた内容は正直ショックだったが、と言って、自分に何が出来るわけではないし、はっきり言えば、自分にはもう関係ない出来事だった。
コメントすべき立場でもないし、同情するつもりもなかった。なのに心が落ち着かなかった。仕事をしている間はいい、しかし取引先から取引先に動く間の車や電車での移動の1人の時間がたまらなかった。退社後に1人であれこれ考えてしまう時間が、もっとたまらなかった。
俺は遂に、携帯の通話ボタンを押した。
『どうした?』
「・・・先輩、お願いがあります。」
俺は、絞り出すような声で言った。
それから数日後、俺は男の前に立った。
「岩武さん。申し訳ないけど、今更僕がノコノコ出て行っても、桜井さんが喜ぶとは思えないよ。僕は彼女に不誠実な男だと思われてるし。だいたい大切なものを失った時、例えどんなに、似ているものを与えられたとしても、それは絶対に代わりなんて、なりはしないよ。」
『・・・。』
「とにかく僕達は、縁がなかったとしか言いようがない。だから、ゴメン・・・。」
岩武さんの話の腰を折るように、そう言うと
『そうだよね・・・確かにそうだよね。それに、今更加奈を許してなんて、虫が良すぎるよね。沖田くんの気持ちも考えず、加奈だって、あなたには知られたくないはずのことをペラペラしゃべっちゃった・・・。私の方こそごめんなさい。聞かなかったことにして。じゃ、失礼します。』
彼女は力なく、通話を切った。
それから、俺はまた変わらずに、年の瀬の慌ただしい日々を過ごして行った、表面上は。
だけど、その内側では、沸々と湧き上がって来るものを抑えるのに必死だった。それが何なのか、自分でもよく判っていなかった。
聞かなかったことにして、と岩武さんは言った。自分もそうするつもりだった。聞いた内容は正直ショックだったが、と言って、自分に何が出来るわけではないし、はっきり言えば、自分にはもう関係ない出来事だった。
コメントすべき立場でもないし、同情するつもりもなかった。なのに心が落ち着かなかった。仕事をしている間はいい、しかし取引先から取引先に動く間の車や電車での移動の1人の時間がたまらなかった。退社後に1人であれこれ考えてしまう時間が、もっとたまらなかった。
俺は遂に、携帯の通話ボタンを押した。
『どうした?』
「・・・先輩、お願いがあります。」
俺は、絞り出すような声で言った。
それから数日後、俺は男の前に立った。