そのままの君が好き〜その恋の行方〜
「もしもし、久しぶり。」
『なに呑気な事、言ってるの?沖田さん、お人よしもたいがいにしなよ。なんで沖田さんがあんな女の為に、人生狂わせなきゃいけないの?』
いきなり噛みつくような三嶋の声。思わず、俺は携帯を耳から離す。
「少し落ち着けよ、そんな大声出さなくても聞こえるから。だいたいお前、何言ってるんだ?」
『とぼけないでよ。昨日殴った相手、桜井加奈の元カレでしょ。厚労省の役人って聞いて、すぐピンと来たよ。』
俺は今回の件の経緯を、会社には説明していない。街中で起こった偶然のケンカで済ますには、場所的にあまりにも無理はあったが、事実以上の説明を求められなかったからだ。
しかし、相手が何者かは当然報告した。それを聞いた三嶋がだいたいを察したのは当然かもしれない。桜井さんと近藤が別れたことは知らないはずの三嶋が「元カレ」と言い切ったのには驚いたけど。
「心配かけてスマン。だけど、もう決めたことだから。」
『だから、何で?桜井加奈に申し訳ないから?』
「桜井さんは関係ない。これは俺の・・・元高校球児としてのケジメだから。」
『えっ?』
意味がわからんと言わんばかりの声を出す三嶋に、俺は言った。
「高校球児にとって不祥事はご法度なんだよ。」
『沖田さん・・・。』
「知らないだろうが、高校野球の世界はきれいごとばかりじゃない。隙あらばライバル校を蹴落とそうと、みんな躍起なんだ。まして俺のいた高校は、当時県下に君臨していたから、それこそ鵜の目鷹の目で探られたよ。俺達は本当に身を律して行動したもんさ。そんな環境で育ったはずの俺が、社会人にもなって暴力事件を起こした。正直、警察にいる時には『元甲子園優勝投手、傷害事件で逮捕』っていう新聞の見出しが頭にちらついて離れなかった。だから釈放って聞いた時は、本当にホッとした。自分の為にじゃない、甲子園、高校野球というものに傷を付けずに済んだことにな。」
『・・・。』
「まして、相手には『甲子園優勝投手を犯罪者にしたくなかった。同じ元高校球児として』と言われた。俺にとって甲子園は勲章である代わりに、決してそれを汚すことの出来ない責任がある。俺は、危うくそれを犯すところだった。その責任は取らなくちゃな。」
『沖田さん・・・。』
果たして、三嶋にどれだけ俺の気持ちが伝わったかはわからなかったが、俺はこう言って、電話を切った。
結果としては、伝わらなかったんだろう。収まらない三嶋は、翌日、桜井さんに会いに行く。まるで俺の真似をしたかのように。
そんなことが起こるとはつゆ知らず、俺は帰路の途中、高校時代の仲間にグル-プLINEで、退職とLINE脱退を報告すると、この日は実家に帰った。心配している親に顔を見せる為と、退職を報告するために。
『なに呑気な事、言ってるの?沖田さん、お人よしもたいがいにしなよ。なんで沖田さんがあんな女の為に、人生狂わせなきゃいけないの?』
いきなり噛みつくような三嶋の声。思わず、俺は携帯を耳から離す。
「少し落ち着けよ、そんな大声出さなくても聞こえるから。だいたいお前、何言ってるんだ?」
『とぼけないでよ。昨日殴った相手、桜井加奈の元カレでしょ。厚労省の役人って聞いて、すぐピンと来たよ。』
俺は今回の件の経緯を、会社には説明していない。街中で起こった偶然のケンカで済ますには、場所的にあまりにも無理はあったが、事実以上の説明を求められなかったからだ。
しかし、相手が何者かは当然報告した。それを聞いた三嶋がだいたいを察したのは当然かもしれない。桜井さんと近藤が別れたことは知らないはずの三嶋が「元カレ」と言い切ったのには驚いたけど。
「心配かけてスマン。だけど、もう決めたことだから。」
『だから、何で?桜井加奈に申し訳ないから?』
「桜井さんは関係ない。これは俺の・・・元高校球児としてのケジメだから。」
『えっ?』
意味がわからんと言わんばかりの声を出す三嶋に、俺は言った。
「高校球児にとって不祥事はご法度なんだよ。」
『沖田さん・・・。』
「知らないだろうが、高校野球の世界はきれいごとばかりじゃない。隙あらばライバル校を蹴落とそうと、みんな躍起なんだ。まして俺のいた高校は、当時県下に君臨していたから、それこそ鵜の目鷹の目で探られたよ。俺達は本当に身を律して行動したもんさ。そんな環境で育ったはずの俺が、社会人にもなって暴力事件を起こした。正直、警察にいる時には『元甲子園優勝投手、傷害事件で逮捕』っていう新聞の見出しが頭にちらついて離れなかった。だから釈放って聞いた時は、本当にホッとした。自分の為にじゃない、甲子園、高校野球というものに傷を付けずに済んだことにな。」
『・・・。』
「まして、相手には『甲子園優勝投手を犯罪者にしたくなかった。同じ元高校球児として』と言われた。俺にとって甲子園は勲章である代わりに、決してそれを汚すことの出来ない責任がある。俺は、危うくそれを犯すところだった。その責任は取らなくちゃな。」
『沖田さん・・・。』
果たして、三嶋にどれだけ俺の気持ちが伝わったかはわからなかったが、俺はこう言って、電話を切った。
結果としては、伝わらなかったんだろう。収まらない三嶋は、翌日、桜井さんに会いに行く。まるで俺の真似をしたかのように。
そんなことが起こるとはつゆ知らず、俺は帰路の途中、高校時代の仲間にグル-プLINEで、退職とLINE脱退を報告すると、この日は実家に帰った。心配している親に顔を見せる為と、退職を報告するために。