そのままの君が好き〜その恋の行方〜
その日、俺は後輩達にノックをしていた。
1月は瞬く間に過ぎ、節分、バレンタインと2月の行事も次々と終わっていった週末。この日は就職活動もなく、俺は午後から、母校を訪れていた。
後輩達は目を輝かせて、俺の打つ打球に飛びついて行く。かつての栄光いま何処、今の後輩達にとって、甲子園はだいぶ遠いものになってしまったことは否めない。
だからと言って、彼らはみんな諦めてはいない。真っ直ぐに前を見ている。その純粋さが正直、羨ましい。俺も彼らに負けないくらいピュアな気持ちで野球に取り組んだ・・・つもりだ。
そして、そのひたむきさを年齢を重ねる毎に失ってしまうことを当たり前だと思うようにだけはなりたくない。彼らを見ていて、俺は心の中で、自分にそう戒めるようになった。
ノックが終わり、今度はブルペンに足を運ぶ。かつて俺が毎日、もっと速い球を投げたい、もっと鋭い変化球を投げられるようになりたい、そう念じて立ち続けた場所に、今は後輩達が、たぶんかつての自分と同じ思いで立っている。
「ナイスボール。」
そう言って、受けた球をピッチャーに返すキャッチャー。そう言えば、俺のボールを受けた塚原が、そう言ってくれるのが、何よりの励みであり、自信になった。
自分が投げてるわけでもないのに、ふとあの頃にタイムスリップしたような不思議な気持ちになって、俺はその様子を眺めていた。
今は1年で1番寒い時期。しかし、俺は寒さも時が経つのも忘れて、この日もグラウンドで汗をかき、声を出した。
陽がそろそろ西に傾き始め、俺がグラウンドの横に立っている時計塔に目をやった時だ。
ギャラリーの女子高生達とは、明らかに違う落ち着いた雰囲気の女性が目に入った俺は、次の瞬間、それが誰だか気が付いて、思わず息を飲んだ。
(桜井さん!)
そんな俺と目が合った彼女は、微笑むと俺に軽く頭を下げる。その彼女の仕草に、俺も慌てて会釈を返す。
卒業して、もうすぐ8年。当然、彼女はかつての制服姿じゃない。だけど、俺はまたデジャヴを感じながら、桜井さんを見ていた。
1月は瞬く間に過ぎ、節分、バレンタインと2月の行事も次々と終わっていった週末。この日は就職活動もなく、俺は午後から、母校を訪れていた。
後輩達は目を輝かせて、俺の打つ打球に飛びついて行く。かつての栄光いま何処、今の後輩達にとって、甲子園はだいぶ遠いものになってしまったことは否めない。
だからと言って、彼らはみんな諦めてはいない。真っ直ぐに前を見ている。その純粋さが正直、羨ましい。俺も彼らに負けないくらいピュアな気持ちで野球に取り組んだ・・・つもりだ。
そして、そのひたむきさを年齢を重ねる毎に失ってしまうことを当たり前だと思うようにだけはなりたくない。彼らを見ていて、俺は心の中で、自分にそう戒めるようになった。
ノックが終わり、今度はブルペンに足を運ぶ。かつて俺が毎日、もっと速い球を投げたい、もっと鋭い変化球を投げられるようになりたい、そう念じて立ち続けた場所に、今は後輩達が、たぶんかつての自分と同じ思いで立っている。
「ナイスボール。」
そう言って、受けた球をピッチャーに返すキャッチャー。そう言えば、俺のボールを受けた塚原が、そう言ってくれるのが、何よりの励みであり、自信になった。
自分が投げてるわけでもないのに、ふとあの頃にタイムスリップしたような不思議な気持ちになって、俺はその様子を眺めていた。
今は1年で1番寒い時期。しかし、俺は寒さも時が経つのも忘れて、この日もグラウンドで汗をかき、声を出した。
陽がそろそろ西に傾き始め、俺がグラウンドの横に立っている時計塔に目をやった時だ。
ギャラリーの女子高生達とは、明らかに違う落ち着いた雰囲気の女性が目に入った俺は、次の瞬間、それが誰だか気が付いて、思わず息を飲んだ。
(桜井さん!)
そんな俺と目が合った彼女は、微笑むと俺に軽く頭を下げる。その彼女の仕草に、俺も慌てて会釈を返す。
卒業して、もうすぐ8年。当然、彼女はかつての制服姿じゃない。だけど、俺はまたデジャヴを感じながら、桜井さんを見ていた。