そのままの君が好き〜その恋の行方〜
言葉を失い、立ち尽くす俺に、微笑んで、


「久しぶりだね、ソウくん。」


と言ったのは、間違いなく白鳥唯。俺がどうしても忘れられずにいる、かつての恋人だった。


なぜ、唯がここにいるのか、全くわけが分からす、茫然と立ち尽くしていると


「ソウくん!」


表情を一変させ、目に涙を一杯に溜めた唯が俺の胸に飛び込んで来る。


「会いたかった、会いたかったよ、ソウくん・・・。」


そんな唯を戸惑いながら、俺は抱きしめていた。世界広しと言えど、就職の最終面接に来て、面接官に抱きつかれたのは、たぶん俺しかいないだろうな・・・。


ひとしきり泣いて、落ち着いた唯の身体を離した俺に


「ごめんね、とりあえず座って。」


と唯は言う。その言葉に促されて、席に座ると、その横に唯も座る。おいおい、これじゃ面接じゃないよ・・・。


「本当にゴメンね、ビックリしたよね。」


「うん、まぁ、相当・・・。」


「S社って、最近ウチの子会社になって。ここウチの本社ビルなんだ。だから、Sの本社もここに入ってて。」


そうなんだ。俺は一応、学生時代も就職活動をし、唯と結婚を意識しながら付き合ってたはずなのに、なんにも知らない・・・。


「本当は、こんなやり方、したくなかったけど、真正面から連絡しても、たぶんソウくんは会ってくれないだろうと思ったから・・・。」


ということは、俺がここまで面接に残れたのは、唯のお陰ということなのか・・・。


俺がそんな思いを抱いたことに気付いたのか、慌てたように唯は言う。


「でも、ここまで残ったのは、ソウくんの実力だからね。あなたが二次突破するまで、私、何にも知らなかったから。」


「・・・。」


微妙な空気が流れる。しばしの沈黙・・・それを破ったのは唯だった。


「ねぇ、この後、時間ある?」


「特に何もないけど・・・。」


今日はひょっとしたら一気に内定・・・なんてちょっと期待してたから、練習は行けないと星さんには言ってある。


「じゃ、ちょっと一緒に出かけよ。ね、いいでしょ?」


と昔のように甘えて来る唯。


「でも、面接は・・・?」


「面接はここじゃなくても出来るよ。さ、行こう。」


えっ、えっ、ちょっと待てよ・・・と言いたいけど、唯は先に立って歩き出す。慌てて俺も後を追う。


それにしても、就職の最終面接に来て、デートに誘われたのも俺くらい・・・でもないか。最近たまに聞くもんな、そういう話・・・。
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