そのままの君が好き〜その恋の行方〜
そこは俺達にとっては、思い出の場所。7年前、付き合い始めた俺達が、最初に一緒に出掛けた場所、江ノ島。
唯が駐車場に車を滑り込ませる。明らかに周りとは異質の外車から降り立ったスーツ姿の俺達は、週末の海辺では、やっぱり異質だった。
あの時は、ゴールデンウィークで、カップルや家族連れでごった返していた。今は3月、海辺の風はまだ冷たく、人もそれほど多くはなかった。
あの時の俺達は、手を繋ぎ、寄り添って歩いていたけど、初めてのデートで、ドキドキで緊張しまくって、たぶん、傍から見てもぎこちなく映っていただろう。
そして今の俺達は、肩を並べて歩いていても、やっぱりぎこちなかった。腕を組むわけでもなく、手を繋ぐわけでもなく、ぎこちないというよりはよそよそしいといった方が正しかったろう。
天気はよく、眺めは最高だった。あの時、2人で見た眺めや景色は本当にきれいだった。そして今、また2人で同じ景色を見ているはずなのに、違って見えるのは、なぜだろう?
少なくとも俺の記憶にある江ノ島の眺めはもっと輝いていた。それは訪れた季節の違いだけが理由ではないはずだ。
「唯・・・さん。」
ついに堪りかねて、俺は呼びかけた。かつてのように、呼び捨てにしかけて、とってつけたように「さん」をつけた俺を、唯は少し寂しそうな表情で見た。
「別に呼び捨てでもいいのに・・・。」
そんなことを言う唯に構わず、俺は少し語気を強める。
「君の会社の系列とは知らなかったけど、今日僕は、就職の最終面接を受けるつもりで来た。僕にとっては、大袈裟じゃなく、これからの人生が掛かってるんだ。ノコノコと、ここまで付いて来て、こんなことを言うのもなんだけど、君とこうして、散歩を楽しんでる余裕は、今の僕にはないんだ。」
そう言い切った俺の顔を、唯は少し見ていたけど、やがて言った。
「本当に楽しくなさそうだもんね、ソウくん。」
「・・・。」
「本当はお昼食べて、そのあとは鎌倉を周りたかったんだけど、仕方がないね。」
そう言って、改めて俺を見る唯。
「じゃ、率直に言います。今日はあなたの最終面接じゃない。私が中止にしてもらったの。グループトップの娘として、ワガママ通させてもらった。」
「・・・。」
「ソウくんをスカウトする為に。」
「スカウト?」
それは意外な言葉だった。
唯が駐車場に車を滑り込ませる。明らかに周りとは異質の外車から降り立ったスーツ姿の俺達は、週末の海辺では、やっぱり異質だった。
あの時は、ゴールデンウィークで、カップルや家族連れでごった返していた。今は3月、海辺の風はまだ冷たく、人もそれほど多くはなかった。
あの時の俺達は、手を繋ぎ、寄り添って歩いていたけど、初めてのデートで、ドキドキで緊張しまくって、たぶん、傍から見てもぎこちなく映っていただろう。
そして今の俺達は、肩を並べて歩いていても、やっぱりぎこちなかった。腕を組むわけでもなく、手を繋ぐわけでもなく、ぎこちないというよりはよそよそしいといった方が正しかったろう。
天気はよく、眺めは最高だった。あの時、2人で見た眺めや景色は本当にきれいだった。そして今、また2人で同じ景色を見ているはずなのに、違って見えるのは、なぜだろう?
少なくとも俺の記憶にある江ノ島の眺めはもっと輝いていた。それは訪れた季節の違いだけが理由ではないはずだ。
「唯・・・さん。」
ついに堪りかねて、俺は呼びかけた。かつてのように、呼び捨てにしかけて、とってつけたように「さん」をつけた俺を、唯は少し寂しそうな表情で見た。
「別に呼び捨てでもいいのに・・・。」
そんなことを言う唯に構わず、俺は少し語気を強める。
「君の会社の系列とは知らなかったけど、今日僕は、就職の最終面接を受けるつもりで来た。僕にとっては、大袈裟じゃなく、これからの人生が掛かってるんだ。ノコノコと、ここまで付いて来て、こんなことを言うのもなんだけど、君とこうして、散歩を楽しんでる余裕は、今の僕にはないんだ。」
そう言い切った俺の顔を、唯は少し見ていたけど、やがて言った。
「本当に楽しくなさそうだもんね、ソウくん。」
「・・・。」
「本当はお昼食べて、そのあとは鎌倉を周りたかったんだけど、仕方がないね。」
そう言って、改めて俺を見る唯。
「じゃ、率直に言います。今日はあなたの最終面接じゃない。私が中止にしてもらったの。グループトップの娘として、ワガママ通させてもらった。」
「・・・。」
「ソウくんをスカウトする為に。」
「スカウト?」
それは意外な言葉だった。