そのままの君が好き〜その恋の行方〜
塚原くんは、快調な滑り出し。先頭打者をいきなり三振に打ち取ると、あとの2人もフライに仕留め、三者凡退。
私が感じた通り、速い球で相手バッターを圧している。さっきまでの緊張しきった顔から一転、由夏は満面の笑みで、拍手を送る。
だけど、試練は次の回にやって来た。先頭打者に好調と思われた速球を狙い打たれ、出塁を許す。
「上位打者に回って行くからな、厳しいな。」
周囲の観客の言葉の通り、打順が1番打者に回って力んだか、今度は四球。ピンチが広がってしまう。そして2番打者にバントで送られ、ピンチは更に拡大。
「これで・・・確実に松本先輩に打順が回るね。」
再び緊張の表情で、胸の前で手を合わせて、戦況を見守る由夏がポツンとつぶやく。
「うん・・・。」
かつてなら、大喜びしていたはずのシチュエーションが、今は圧迫感を持って、私達に迫って来る。
続く3番バッターの打球は快音を残して、レフトへ。やられた、と思ったけど、レフトが好捕してくれた。だけど、犠牲フライになって、3塁ランナーがホームイン。これで1点差。ツーアウト、ランナー2塁。一打同点のピンチは続き
「4番、サード松本。」
のコールと大歓声に送られて、先輩が打席に立つ。
「聡志・・・。」
由夏の祈りのポーズは相変わらず。どうなることかと、私もドキドキしながら、グラウンドを見つめていると、Eの監督がベンチから出て来て、1塁ベースを指差す。
「えっ?」
「シビアだなぁ、オープン戦で敬遠かよ。」
周りから、驚きの声が上がる。故意四球と呼ばれる、強打者との勝負を避ける作戦が功を奏し、続くバッターをセカンドゴロに打ち取った塚原くんは、ややうつむき加減にベンチへ戻って行く。
「2イニング1失点か、中途半端な結果。聡志らしいよ。」
緊張が溶けて、いつもの由夏節が戻って来たけど、そのくせ、一所懸命に拍手を贈る由夏。松本先輩との対決が、ハッキリとした形にならなかったのは、チョッピリ残念だったけど、私も拍手で塚原くんを見送った。
結局、試合は塚原くんの後を受けたピッチャーが打たれて、Eの逆転負け。この夜、Eは次の試合に備えて、東京に泊まりなので、由夏は塚原くんと会う約束していたけど、時間があるので、私達はお茶でもしようとドームを後にする。
ドーム近くのホテルのラウンジに向かおうと、私が歩き出すと
「ねぇ、あれ沖田くんじゃない?」
「えっ?」
由夏が指差す方向を見ると、確かに大股で歩いて行く沖田くんの姿が。そうか、沖田くんも親友の応援に来てたのか、とは思ったが、距離もあったので、結局声を掛けることも出来ず、沖田くんは私達に気付かないまま、足早に去って行ってしまった。
私が感じた通り、速い球で相手バッターを圧している。さっきまでの緊張しきった顔から一転、由夏は満面の笑みで、拍手を送る。
だけど、試練は次の回にやって来た。先頭打者に好調と思われた速球を狙い打たれ、出塁を許す。
「上位打者に回って行くからな、厳しいな。」
周囲の観客の言葉の通り、打順が1番打者に回って力んだか、今度は四球。ピンチが広がってしまう。そして2番打者にバントで送られ、ピンチは更に拡大。
「これで・・・確実に松本先輩に打順が回るね。」
再び緊張の表情で、胸の前で手を合わせて、戦況を見守る由夏がポツンとつぶやく。
「うん・・・。」
かつてなら、大喜びしていたはずのシチュエーションが、今は圧迫感を持って、私達に迫って来る。
続く3番バッターの打球は快音を残して、レフトへ。やられた、と思ったけど、レフトが好捕してくれた。だけど、犠牲フライになって、3塁ランナーがホームイン。これで1点差。ツーアウト、ランナー2塁。一打同点のピンチは続き
「4番、サード松本。」
のコールと大歓声に送られて、先輩が打席に立つ。
「聡志・・・。」
由夏の祈りのポーズは相変わらず。どうなることかと、私もドキドキしながら、グラウンドを見つめていると、Eの監督がベンチから出て来て、1塁ベースを指差す。
「えっ?」
「シビアだなぁ、オープン戦で敬遠かよ。」
周りから、驚きの声が上がる。故意四球と呼ばれる、強打者との勝負を避ける作戦が功を奏し、続くバッターをセカンドゴロに打ち取った塚原くんは、ややうつむき加減にベンチへ戻って行く。
「2イニング1失点か、中途半端な結果。聡志らしいよ。」
緊張が溶けて、いつもの由夏節が戻って来たけど、そのくせ、一所懸命に拍手を贈る由夏。松本先輩との対決が、ハッキリとした形にならなかったのは、チョッピリ残念だったけど、私も拍手で塚原くんを見送った。
結局、試合は塚原くんの後を受けたピッチャーが打たれて、Eの逆転負け。この夜、Eは次の試合に備えて、東京に泊まりなので、由夏は塚原くんと会う約束していたけど、時間があるので、私達はお茶でもしようとドームを後にする。
ドーム近くのホテルのラウンジに向かおうと、私が歩き出すと
「ねぇ、あれ沖田くんじゃない?」
「えっ?」
由夏が指差す方向を見ると、確かに大股で歩いて行く沖田くんの姿が。そうか、沖田くんも親友の応援に来てたのか、とは思ったが、距離もあったので、結局声を掛けることも出来ず、沖田くんは私達に気付かないまま、足早に去って行ってしまった。