そのままの君が好き〜その恋の行方〜
「塚原くん、まずはよかったね。」
ラウンジに入って、注文を済ませると私は由夏に言った。
「うん、さっきも言ったけど、中途半端だよね。でも、もう1度チャンスは、もらえるんじゃないかな。」
由夏もとりあえず、ホッとした表情を浮かべる。
「でもね、結果はもちろんだけど、私嬉しかったことがある。」
「嬉しかったこと?」
「うん。聡志が今日投げるのは、2イニングってことはわかってるから、最初の回、3人で抑えた時、ちょっとホッとしたんだ。これで、松本先輩まで、回らなくて済むかもって。」
「うん。」
「でも、結局次の回に打たれて、先輩に回っちゃったじゃん。正直、ヤバいなぁって思ってたら、敬遠だった。シメタ!って思って、マウンドの聡志見たら、あいつ、悔しそうに監督を見て、その後、1塁に歩く松本先輩を睨むように見つめてた。それ見た時に、ああ聡志、本当は勝負したかったんだ、逃げたくなかったんだって・・・嬉しかった。今日は悠の真似して、惚気けさせてもらう。私の彼氏、結構やるじゃんって。これなら絶対一軍に残れるって、私、確信した。」
そう言って、本当に嬉しそうに笑う由夏。
「だから、今日は後で、うんと褒めてやる。あいつは、生意気言うなって、素直には喜ばないだろうけど。」
「はいはい、わかりました。」
そんな由夏に、いつもは悠の惚気けをあしらう為の、彼女の常套句を、今日は私が浴びせかける。そして、思わず吹き出す私達。
そんなところへ、注文したコーヒーが到着。とりあえず、一口飲んだあと、由夏がまた口を開いた。
「あの聡志の姿、沖田くん見ててくれたかな?」
「えっ?」
いきなり沖田くんの名前が出て来て、私は驚く。
「今の沖田くんは、本当に逃げてるよね。仕事からも逃げちゃったし、加奈からも逃げてる。加奈と正面から向き合うことから。」
「由夏・・・。」
「そして、加奈もだよ。」
「えっ?」
由夏の矛先が、今度は自分に向かって来て、私はますます驚かされる。
「加奈。沖田くんはさ、何しに近藤って人の所に行ったのかな?」
「・・・。」
「実は私達、誰も知らない。沖田くん自身もたぶん誰にも言ってない。加奈の彼氏だったわけでもない、むしろ加奈に裏切られた立場だったのに・・・。この間、2人で話した時に加奈は何でそれを沖田くんに聞かなかったの?沖田くんは、何で加奈にそれを言わないんだろう・・・?」
「由夏・・・。」
「だから逃げてるんだよ、2人して。」
そう言って、由夏は真っ直ぐ私を見る。
「ゴメン。今日はこんな話するつもりじゃなかったのに・・・でも沖田くんの姿、見かけちゃったもんだから、つい・・・。」
「ううん。」
そう答えるのが、精一杯の私。
「ここまで来たら、遠慮なく言っちゃうけど。加奈、辛かったのはわかる。もう恋愛なんていいって、言いたくなるのもわかる。でも・・・。」
ここで一瞬、間を置いたあと、由夏は言った。
「本当にこのままでいいの?」
「由夏・・・。」
「って、8年前、聡志に対して素直になれないでいる私に、加奈はそう言ってくれた。今こそ、この言葉を、私は加奈に返そうと思う。」
由夏の言葉が、心に沁みた。
ラウンジに入って、注文を済ませると私は由夏に言った。
「うん、さっきも言ったけど、中途半端だよね。でも、もう1度チャンスは、もらえるんじゃないかな。」
由夏もとりあえず、ホッとした表情を浮かべる。
「でもね、結果はもちろんだけど、私嬉しかったことがある。」
「嬉しかったこと?」
「うん。聡志が今日投げるのは、2イニングってことはわかってるから、最初の回、3人で抑えた時、ちょっとホッとしたんだ。これで、松本先輩まで、回らなくて済むかもって。」
「うん。」
「でも、結局次の回に打たれて、先輩に回っちゃったじゃん。正直、ヤバいなぁって思ってたら、敬遠だった。シメタ!って思って、マウンドの聡志見たら、あいつ、悔しそうに監督を見て、その後、1塁に歩く松本先輩を睨むように見つめてた。それ見た時に、ああ聡志、本当は勝負したかったんだ、逃げたくなかったんだって・・・嬉しかった。今日は悠の真似して、惚気けさせてもらう。私の彼氏、結構やるじゃんって。これなら絶対一軍に残れるって、私、確信した。」
そう言って、本当に嬉しそうに笑う由夏。
「だから、今日は後で、うんと褒めてやる。あいつは、生意気言うなって、素直には喜ばないだろうけど。」
「はいはい、わかりました。」
そんな由夏に、いつもは悠の惚気けをあしらう為の、彼女の常套句を、今日は私が浴びせかける。そして、思わず吹き出す私達。
そんなところへ、注文したコーヒーが到着。とりあえず、一口飲んだあと、由夏がまた口を開いた。
「あの聡志の姿、沖田くん見ててくれたかな?」
「えっ?」
いきなり沖田くんの名前が出て来て、私は驚く。
「今の沖田くんは、本当に逃げてるよね。仕事からも逃げちゃったし、加奈からも逃げてる。加奈と正面から向き合うことから。」
「由夏・・・。」
「そして、加奈もだよ。」
「えっ?」
由夏の矛先が、今度は自分に向かって来て、私はますます驚かされる。
「加奈。沖田くんはさ、何しに近藤って人の所に行ったのかな?」
「・・・。」
「実は私達、誰も知らない。沖田くん自身もたぶん誰にも言ってない。加奈の彼氏だったわけでもない、むしろ加奈に裏切られた立場だったのに・・・。この間、2人で話した時に加奈は何でそれを沖田くんに聞かなかったの?沖田くんは、何で加奈にそれを言わないんだろう・・・?」
「由夏・・・。」
「だから逃げてるんだよ、2人して。」
そう言って、由夏は真っ直ぐ私を見る。
「ゴメン。今日はこんな話するつもりじゃなかったのに・・・でも沖田くんの姿、見かけちゃったもんだから、つい・・・。」
「ううん。」
そう答えるのが、精一杯の私。
「ここまで来たら、遠慮なく言っちゃうけど。加奈、辛かったのはわかる。もう恋愛なんていいって、言いたくなるのもわかる。でも・・・。」
ここで一瞬、間を置いたあと、由夏は言った。
「本当にこのままでいいの?」
「由夏・・・。」
「って、8年前、聡志に対して素直になれないでいる私に、加奈はそう言ってくれた。今こそ、この言葉を、私は加奈に返そうと思う。」
由夏の言葉が、心に沁みた。