そのままの君が好き〜その恋の行方〜
次の日の夜は、俺にとっては、今となってはA社にいた証でもある可愛い2人の後輩、三嶋と井口との久々の再会。


前にも3人で呑んだことのある居酒屋で待っていると、2人が並んでやって来た。


「お疲れさん。2人並んで登場とは、お安くないな。」


「バカ、入口で一緒になっただけだよ。」


まぁ、こっちが会社辞めちゃったから仕方ないけど、三嶋はもう全く先輩扱いしてくんないな。


とりあえずビールを頼んだ俺達は


「それでは、沖田さんの就職祝いと、身勝手な先輩の尻拭いで、日々大変な思いをしている井口くんの慰労と、プロジェクトの成功に日夜奔走する私の日頃の活躍に乾杯!」


と相変わらず、勝手に乾杯の音頭を取ってる三嶋に苦笑いしながら、俺達はグラスを合わせた。


「先輩、改めておめでとうございます。」


「ありがとう。でも井口に祝ってもらう筋じゃねぇよな。お前には、本当に迷惑かけちまったから。」


「そんなことありません。先輩の穴は確かに大きかったですけど、でもいろいろ陰でフォローしていただきましたし。」


「だけど、最近じゃ、すっかり電話も来なくなったじゃないか。」


「はい、いつまでも先輩に頼ってちゃいけないな、って。これでもあと3ヶ月もすれば、今度は僕が後輩を指導しなくちゃならないんですから。」


そう言う井口の顔は、頼もしかった。


「うん、エラい!さぁ呑みな、呑みな。」


と言って、ビールを井口に注ぐ三嶋。ただ後輩に呑ませたいだけなのだ。


「そう言うお前の近況は?」


「私は年明けから、本当に飛び回ってる。大袈裟じゃなく、半分ぐらい海外にいたかな?」


話を聞いていると、通訳としてだけではなく、三嶋自身がしっかり勉強して、プロジェクトの重要なポジションを占めてるようだ。


おしゃべりなのが、玉にキズなんだが、コイツの飲み込みの早さと行動力には、何度も舌を巻いた。


コイツにとっても、会社にとってもいい人事だったんだな、とつくづく思った。


「沖田さんは、まずは何をされるんですか?」


三嶋の独演会が、ようやく終わったのを見計らって、井口が聞いて来た。


「とりあえずは、まずは引っ越しの現場だよ。1年〜2年はバッチリしごかれるらしい。」


「そうなんだ。じゃ、沖田さんのお客さん第1号になってあげようか?」


「えっ?」


「実は、私ちょっと引っ越し考えてるんだ。」


「そうなんだ。じゃ、その節は是非当社で。」


と少しおちゃらけ気味に、頭を下げる俺の姿に、2人は笑う。


こうして、俺達は楽しい時間を過ごして行った。いろんなことを話したが、後輩2人は明日も仕事なので、あまり遅くならないように、お開きにした。


「先輩、短い間でしたが、お世話になりました。先輩もこれから新しい環境で、大変でしょうけど、お身体に気を付けて、頑張って下さい。」


「ありがとう。井口も頑張れよな。」


「はい、では失礼します。」


そう言って、俺と三嶋に一礼すると、井口は帰って行った。
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