そのままの君が好き〜その恋の行方〜
「また是非いらして下さい。」
これ以上ないインパクトを与えられたであろうご夫妻に見送られて、私達がお店を出たのは、それから1時間余り経った頃だった。
「美味しかったなぁ。」
満足そうな沖田くん。真面目一方だとばかり思っていた彼の、お茶目な面を初めて見て、なんか嬉しかった。
「高校生活3大後悔の1つだよなぁ。」
「クレープ食べなかったこと?」
「そう。」
「ちょっと大袈裟じゃない?」
笑いながら、そう言う私に、沖田くんは大真面目な顔で首を横に振って見せる。
「大袈裟じゃないよ。生涯最高のクレープだ。本当、失敗した。」
「じゃ、ちなみに後の2つの後悔は何?」
「1つは、3年の時に甲子園に行けなかったこと。もう1つは・・・ある人に想いを伝えることが出来なかったこと。」
軽い気持ちで聞いたら、結構重い答えが返って来て、私は思わず表情が固くなってしまう。
「ところで、これからどうする?」
「えっ?」
「僕に、何か話があるんでしょ?」
口調は軽かったけど、そう言った沖田くんの表情は真剣になっていた。一瞬、見つめ合った私達。
「うん。悪いけど、学校・・・ううんグラウンドでいいかな?」
「わかった。」
そう言って私達は歩き出す。
夕方になって、気温も下がったグラウンドには、既に人影はなかった。私はまた、ブルペン近くの時計塔の横に立った。
「やっぱり、ここなんだね。」
「落ち着くんだもん。クレープ屋さんなら、あの窓際の席。グラウンドに来たならここ、勝手に自分の指定席だと思ってるから。」
そう言って沖田くんに微笑んだ私は、すぐに表情を引き締めると言った。
「この間の話の続きがしたくて。というか、聞きたいことがあるの。」
聞きたいこと?沖田くんの眉が、そう言いたげに動いた。
「沖田くんは、どうしてあの人・・・近藤さんのところに行ったの?」
その私の問いに、ハッとする表情になる沖田くん。
「私と近藤さんが別れたことを聞いたからだということはわかる。でも、なぜなの?あなたと私はいろいろあったけど、ようやく付き合い始めて、さぁこれからって時に、私はあなたを裏切った。でも結局、あなたを傷つけてまで、選んだその恋に破れた。ざまぁみろ、いい気味だぜ、そう思うのが普通じゃない?なのに、なんで・・・。」
そう問い掛ける私の言葉を遮るように、沖田くんは言った。
「許せなかったんだ。」
「えっ?」
「どうしても許せなかったんだ。自分の大切な人を苦しめ、傷付けたあの男が。」
「沖田くん・・・。」
躊躇うことなく、そう言い切った沖田くんの顔を、私は息を呑んで、見つめてしまっていた。
これ以上ないインパクトを与えられたであろうご夫妻に見送られて、私達がお店を出たのは、それから1時間余り経った頃だった。
「美味しかったなぁ。」
満足そうな沖田くん。真面目一方だとばかり思っていた彼の、お茶目な面を初めて見て、なんか嬉しかった。
「高校生活3大後悔の1つだよなぁ。」
「クレープ食べなかったこと?」
「そう。」
「ちょっと大袈裟じゃない?」
笑いながら、そう言う私に、沖田くんは大真面目な顔で首を横に振って見せる。
「大袈裟じゃないよ。生涯最高のクレープだ。本当、失敗した。」
「じゃ、ちなみに後の2つの後悔は何?」
「1つは、3年の時に甲子園に行けなかったこと。もう1つは・・・ある人に想いを伝えることが出来なかったこと。」
軽い気持ちで聞いたら、結構重い答えが返って来て、私は思わず表情が固くなってしまう。
「ところで、これからどうする?」
「えっ?」
「僕に、何か話があるんでしょ?」
口調は軽かったけど、そう言った沖田くんの表情は真剣になっていた。一瞬、見つめ合った私達。
「うん。悪いけど、学校・・・ううんグラウンドでいいかな?」
「わかった。」
そう言って私達は歩き出す。
夕方になって、気温も下がったグラウンドには、既に人影はなかった。私はまた、ブルペン近くの時計塔の横に立った。
「やっぱり、ここなんだね。」
「落ち着くんだもん。クレープ屋さんなら、あの窓際の席。グラウンドに来たならここ、勝手に自分の指定席だと思ってるから。」
そう言って沖田くんに微笑んだ私は、すぐに表情を引き締めると言った。
「この間の話の続きがしたくて。というか、聞きたいことがあるの。」
聞きたいこと?沖田くんの眉が、そう言いたげに動いた。
「沖田くんは、どうしてあの人・・・近藤さんのところに行ったの?」
その私の問いに、ハッとする表情になる沖田くん。
「私と近藤さんが別れたことを聞いたからだということはわかる。でも、なぜなの?あなたと私はいろいろあったけど、ようやく付き合い始めて、さぁこれからって時に、私はあなたを裏切った。でも結局、あなたを傷つけてまで、選んだその恋に破れた。ざまぁみろ、いい気味だぜ、そう思うのが普通じゃない?なのに、なんで・・・。」
そう問い掛ける私の言葉を遮るように、沖田くんは言った。
「許せなかったんだ。」
「えっ?」
「どうしても許せなかったんだ。自分の大切な人を苦しめ、傷付けたあの男が。」
「沖田くん・・・。」
躊躇うことなく、そう言い切った沖田くんの顔を、私は息を呑んで、見つめてしまっていた。