そのままの君が好き〜その恋の行方〜
「沖田、くん・・・。」
一瞬、時が止まったかのように、固まってしまった私は、辛うじて、つぶやくように彼の名を呼んだ。
そんな私に、沖田くんは優しく微笑むと言った。
「ここだと言えるんだな。」
「えっ?」
「この間も、そうだった。実は君のこと、高校の時から意識してたって、ずっと言わないでいた事、気がついたらしゃべってた。」
「・・・。」
「あのままの流れでコクりそうになった。でも、あの時点の僕はプー太郎、厚労省のエリート官僚である桜井さんに告白するなんて、身の程知らずにも程がある。だから、必死に思いとどまった、あんな別れ方をするしかなかった。」
「・・・。」
「今だから、正直に言うけど、同窓会の時に、桜井さんから告白された時は、本当に驚いた。君が僕のことを好きでいてくれてるなんて、夢にも考えたことなかったから。実は僕の方こそ、君のこと、君よりもずっと前から、クラスメイトになる前から、好きだったんだ。そう言えてれば・・・。」
そう言って、少し遠くを見るような表情になる沖田くん。
「でも、言えなかった。僕には大学に入ってすぐに、恋人が出来た。その子と付き合い始めた後は、もう桜井さんのことを思い出すこともなかった。一緒にいるのが当たり前で、結婚するのが当たり前で・・・そう思い込んでいたら、突然振られた。他に好きな人が出来たとでも言われれば、まだ諦めも付いたのかもしれない。だけど、あなたとは住む世界が違うからと言われての別れは、気持ちの整理が全くつかなかった。そんなことを色濃く引きずったままだった当時の僕にとって、君からの告白は、高校時代に抱いていた君へのコンプレックスを思い起こさせられるだけだったから。」
「・・・。」
「我ながら感心するしかないほどの見事なヘタレっぷり、自分でもつくづくそう思う。でも、君への思いに改めて気づいた時、僕にはようやくわかったんだ。頭が良くて、スポ-ツが得意で、高校を首席で卒業して、僕達の代表で卒業式に答辞を読んで、難関の国家試験を突破して、厚労省のキャリア官僚になって・・・でもそんなこと鼻にかけることなんか、絶対にしなくて、優しくて、思いやりがあって、何事にも一所懸命で・・・そんな君が、そのままの桜井加奈という女性を俺は好きになったんだって。そんな君に自分がふさわしいかどうか、それは桜井さんが決めることで、僕がうじうじ思い悩むことじゃない。こんな当たり前のことに気付くのに、僕は8年掛かってしまった・・・。」
そう言った沖田くんの視線が、また私に真っ直ぐ注がれる。
「そして今日、やっと言えました。自分にとって、いつまでも大切なこの場所で。白鳥さんや塚原、他にもきっと何人もの連中が、想い人に自分の気持ちをぶつけて来たこの場所に勇気をもらって、やっと言えました。もう1度だけ言わせて下さい。桜井さんが好きです、そのままの君が・・・大好きです!」
とうとうすべての思いの丈を私にぶつけてくれた沖田くん。その姿を見つめていた、私の心の中には、熱いものがこみあげて来ていた。
一瞬、時が止まったかのように、固まってしまった私は、辛うじて、つぶやくように彼の名を呼んだ。
そんな私に、沖田くんは優しく微笑むと言った。
「ここだと言えるんだな。」
「えっ?」
「この間も、そうだった。実は君のこと、高校の時から意識してたって、ずっと言わないでいた事、気がついたらしゃべってた。」
「・・・。」
「あのままの流れでコクりそうになった。でも、あの時点の僕はプー太郎、厚労省のエリート官僚である桜井さんに告白するなんて、身の程知らずにも程がある。だから、必死に思いとどまった、あんな別れ方をするしかなかった。」
「・・・。」
「今だから、正直に言うけど、同窓会の時に、桜井さんから告白された時は、本当に驚いた。君が僕のことを好きでいてくれてるなんて、夢にも考えたことなかったから。実は僕の方こそ、君のこと、君よりもずっと前から、クラスメイトになる前から、好きだったんだ。そう言えてれば・・・。」
そう言って、少し遠くを見るような表情になる沖田くん。
「でも、言えなかった。僕には大学に入ってすぐに、恋人が出来た。その子と付き合い始めた後は、もう桜井さんのことを思い出すこともなかった。一緒にいるのが当たり前で、結婚するのが当たり前で・・・そう思い込んでいたら、突然振られた。他に好きな人が出来たとでも言われれば、まだ諦めも付いたのかもしれない。だけど、あなたとは住む世界が違うからと言われての別れは、気持ちの整理が全くつかなかった。そんなことを色濃く引きずったままだった当時の僕にとって、君からの告白は、高校時代に抱いていた君へのコンプレックスを思い起こさせられるだけだったから。」
「・・・。」
「我ながら感心するしかないほどの見事なヘタレっぷり、自分でもつくづくそう思う。でも、君への思いに改めて気づいた時、僕にはようやくわかったんだ。頭が良くて、スポ-ツが得意で、高校を首席で卒業して、僕達の代表で卒業式に答辞を読んで、難関の国家試験を突破して、厚労省のキャリア官僚になって・・・でもそんなこと鼻にかけることなんか、絶対にしなくて、優しくて、思いやりがあって、何事にも一所懸命で・・・そんな君が、そのままの桜井加奈という女性を俺は好きになったんだって。そんな君に自分がふさわしいかどうか、それは桜井さんが決めることで、僕がうじうじ思い悩むことじゃない。こんな当たり前のことに気付くのに、僕は8年掛かってしまった・・・。」
そう言った沖田くんの視線が、また私に真っ直ぐ注がれる。
「そして今日、やっと言えました。自分にとって、いつまでも大切なこの場所で。白鳥さんや塚原、他にもきっと何人もの連中が、想い人に自分の気持ちをぶつけて来たこの場所に勇気をもらって、やっと言えました。もう1度だけ言わせて下さい。桜井さんが好きです、そのままの君が・・・大好きです!」
とうとうすべての思いの丈を私にぶつけてくれた沖田くん。その姿を見つめていた、私の心の中には、熱いものがこみあげて来ていた。